「楽しかった」「面白かった」で終わっていない!? 我が子が自分の気持ちや考えを伝えられるようになるために…

出産・子育て

公開日:2018/9/16

『じぶんで考えじぶんで話せる こどもを育てる哲学レッスン』(河野哲也/河出書房新社)

 親ならば、誰もが自分の子供に“考える力”や“話す力”を持ってほしいはずだ。子供が社会に出てから活躍したり、人生の重要な決断を行うためには、「周りのみんながそうしているから」「誰々がこう言っているから」という風に流されるのではなく、「自分はこうしたい」「自分はこう考える」といった意見を持ち、ときにはそれを他人と議論しなくてはならない。また、実際の就職活動においても、多くの企業が面接やグループディスカッションを行い、学生の思考力やコミュニケーション能力を見定めている。だが、従来の学校教育の枠組みの中にはこうした能力を養う場が少ない(私自身も、大学でゼミに入るまで、きちんとした議論ができる機会はなかった)。

 そこで、本書『じぶんで考えじぶんで話せる こどもを育てる哲学レッスン』(河野哲也/河出書房新社)が提案するのは、考える力や話す力を養うための“こども哲学”である。「哲学」と言うとむずかしく感じるかもしれないが、内容は親子の会話の中でもできるもの。本稿では、その内容の一端を紹介する。

■“こども哲学”とは何か?

 こども哲学は、何も高名な哲学者の文章を読む…というものではなく、身近なテーマについて議論する対話的活動のことを指している。まず、子供たちにとって身近な話題や物語などを題材にし、彼ら自身がテーマと問題を決める。その後、皆で意見を出し合い、問題についての考えを深め合う…という流れだ。必ずしも結論はでなくても良いのだという。

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■“こども哲学”は家庭でもできる!

 本書では、主に複数人の子供が集まる教育現場などを想定して“こども哲学”について述べているが、親子や兄弟など、家庭の中でも哲学対話をすることは可能なのだとか。特に、子供が反抗期を迎える前(幼稚園・保育園から小学校中学年ごろまで)ならば、照れなどもなくやりやすいはずだという。本書では、実践する際のポイントが以下のようにまとめられているから、参考にしてほしい。

1 使う素材はこどもの興味に合わせる
2 こどもが面白がっていることを掘り下げるとテーマが見つかる
3 「何がおもしろい?」「何でだと思う?」――キーワードで疑問を引き出す
4 こどもから出てきた問いから、対話を進める
5 調べる作業で終わらせない
6 きょうだいや友だちどうしの場でもやってみる
7 「またやりたい!」と思わせる終わり方

 教育現場でも、家庭でも、重要になるのは、テーマを“子供に”選ばせることだ。著者によれば、親が子供に考えてほしいテーマを押し付けると、子供は親が求めている優等生的な回答を探してしまうのだという。そうではなく、子供が純粋に「なぜだろう?」と思える疑問を引き出すことが、楽しく学びある議論を作るコツ。“こども哲学”は、家でも、電車の中でも、相手さえいればどこでもできる。ぜひ、本書を参考にして、哲学を日常に取り入れてみてはいかがだろうか?

文=中川 凌