おひとりさま必読。一人暮らしで楽しく老いるためのマネー術

暮らし

更新日:2019/3/1

『おひとりさまの「シニア金融」』(岡内幸策/日本経済新聞出版社)

 人生100年時代、定年後に必要なお金とは…? 夫婦や子育て家庭を対象にしたマネー関連の書籍が目立つなかで、キャリア女子やシングル男性に焦点を当てて解説してくれるのが『おひとりさまの「シニア金融」』(岡内幸策/日本経済新聞出版社)だ。忘れてはならないのが、夫婦だって死ぬ時にはひとりになるということ。そういう意味では、すべての人のための参考書だと言える。

 本書の特徴は、おひとりさまシニアの不安要素として、「お金」「健康」だけでなく「孤独」を挙げていることだ。老後にひとりになった時、自分はどんな気持ちで生きているのだろう? それをきちんと考えた時に初めて、自分が残しておくべきお金や住宅、友人について考えることができるのかもしれない。本書は、ドライなハウツー本とは違い、語りかけるような文章にも親近感が持てる。

■ローン返済を優先しないという選択

「お金は多いほど良い」というフレーズに“当たり前だ”と感じるかもしれないし、お金が多いほど幸せなのかどうか疑問を感じる人もいるだろう。だが、本書で紹介されているシニア向けの資産や金融の知恵、またお金を少しでも多く残すための裏技はどれもリアリティがあり、かえってお金の重要性が心に沁みた。

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 その中のひとつを紹介すると、損をしないためには、「住宅ローンなどを急いで完済しない」という選択肢があるという。住宅ローンは一般的に70歳までに完済することが想定されているが、退職金で残額を一気に返済することや、手持ち資金をゼロにしてまで返済することにはリスクもあるという。急な病気や怪我で出費が必要になることも十分にありえるのだ。

■友達はやっぱり多いほうがいい

 若い時にはおもしろく感じられた一人暮らし、シニアの頃にはどうなるだろうか? 本書では「“1人”と“独り”には大きな違いがある」と指摘する。シニアになってから仕事や自分の好きなことができなくなると、孤独が途端につらくなる、と本書は綴る。周囲に人はいるけれど、自分が人の輪に入っていけなかったら、その疎外感に耐えられるだろうか…。

 それを避けるためには、年齢を気にせず新たな趣味を通じて仲間を作るのもいいし、老人向けのシェアハウスに入ることや、学校や地域のボランティアに参加することもひとつの方法だ。「恥ずかしい」と怖気づいたり、見栄を張ったりすることなく、積極的にコミュニティに入っていくのがいい、と提案している。もしくは今、人とつながるために楽しんでいるお酒やスポーツなどの趣味を引き続き楽しむことや、人に感謝しながら長く付き合っていける友達を増やしていくこともすすめている。これらは早速今からチャレンジすることができそうだ。

■おひとりさまシニアに起こり得るリスク

 本書ではいろいろなシチュエーション別に、おひとりさまシニアの生活に起こりうる心配事についても紹介されている。不安要素を洗い出し、本書を参考にすることで、解決につながることも多いだろう。

 たとえば、女性の場合。60歳の女性の5人に1人が96歳まで生きる時代に、十分な年金がないと、病気や怪我などで思うように自立できなくなることを考えておくべき。特に、80歳をすぎると認知症が進む人が多いため、収入や生活費について、頭のはっきりしているうちに計算しておくほうがいいそうだ。

 一方、男性が独身でいると直面しやすいのが、部屋の掃除や整頓が行き届かず、誰にも注意されることがないため、不要な荷物が増えていくという状況。粗大ゴミの分別がわからないのであれば、プロに依頼する方法もある。しかし、物がなくなってがらんとした部屋の空間を埋めたい誘惑にかられる人が多いそうで、いっそのことコンパクトな物件へ引っ越すこともすすめている。

■お金で買えないものもある

「他者の懐をあてにしながら生活している人は、長年のツケを払わされる日が近づいている」「60歳を過ぎても仕事はあるが、決して生やさしいものではない」と、シニアの一人暮らしという現実に関する厳しい言及もある。だが、「お金はあったほうが良い。しかし、お金で買えないものもある、ということを肝に銘じておけば、それなりに楽しく充実した人生が送れる」と、読者に寄り添う言葉で本書は結ばれる。

 人生が思い通りにならないことは若いころだって同じだ。定年後、自分がどう生きたいかを考え、できるだけ多くの知識を得ることで、不安は取り除いていける——そのことをきちんと覚えておきたい。

文=吉田有希