日本はハラスメント対策の後進国! この理不尽が続く理由は?

社会

2018/9/18

『職場のハラスメント なぜ起こり、どう対処すべきか』(大和田敢太/中央公論新社)

 世界中に“ハラスメント”の嵐が吹き荒れている。昨年アメリカで「#MeToo」をスローガンに、セクハラ被害に遭った女性たち――ハリウッド女優から一般女性にいたるまでが、加害者とされる著名な映画監督や俳優たちを次々と糾弾したムーブメントがあった。

 一方、日本でもセクハラ絡みの醜聞が絶えない。「セクハラ罪という罪はない」という発言まで飛び出し、スポーツ界でも繰り返しパワハラに関する問題がワイドショーを賑わせるなど、残念ながら日本はハラスメント対策において後進国と言わざるを得ないようだ。

『職場のハラスメント なぜ起こり、どう対処すべきか』(大和田敢太/中央公論新社)は、ハラスメント規制の先進地域のEU諸国の法整備に通じ、「職場のモラルハラスメントをなくす会」の世話人でもある著者が現在の日本のハラスメント事情を分析、解説し、海外での事例を参考にしながら今後どのように対策を講じるべきかを提言するものだ。

■職場でのいじめは、個人の問題ではない

 そもそも職場におけるハラスメントとは、かつては「いじめ」や「嫌がらせ」と表現され、従来は、当事者間におけるコミュニケーション不調などの個人的、あるいは個人間の問題だと軽視されがちだった。それが、現代の病理である「ハラスメント」の概念の浸透とともに、いじめ問題は、企業経営上の課題であるという見方が徐々に普及するようになってきた。長時間労働を原因とした健康悪化による死亡、うつ病などの精神疾患の発症や自殺、過労死の労災認定問題など、企業が取り組むべき問題は山積みだ。それでもまだ、過酷な労働、人権無視、法令・コンプライアンス違反…そんないわゆる「ブラック企業」とよばれる企業も存在し、ハラスメントが横行しているのが実情だ。

■日本でもハラスメント対策の法整備を

 本書では、実際に職場で起こっているハラスメントの実例を型別に分け、細分化して分析する。そして、ハラスメントに対する規制と対策について法律が整っているEU、特に問題解決に積極的なベルギー、フランスをはじめとした各国の法規制や取り組みを紹介する。そして、セクハラの部分的規制をのぞいて、ハラスメント全般に対する法的規制と救済制度がない日本における法整備の必要性を強く主張する。

 電通の新入社員だった女性が過重労働と職場のハラスメントにより自ら命を絶った事件について、遺族が判決後にコメントを公表した。今なお日本が抱えているハラスメントの闇の深さが感じとれる。

社員の権利と健康を守らずして利益をあげることは、会社を守ることになりません。以上のことを念頭に置いて日本の全ての経営者は会社経営の方針を立て、経営を行っていかなければならないということです。
社員が過労死しなければ罰せられない。
社員からの訴えがなければ罰せられない。
通報されなければ罰せられない。
調査が入らなければ罰せられない。

 この血を吐くような言葉の重みを、私たちは真摯に受け止めなければならない。

文=銀 璃子