負の感情をSNSにすぐアップしてしまう前に…不機嫌な身心とサヨナラする技術

暮らし

2018/9/25

『不機嫌は罪である』(齋藤孝/KADOKAWA)

現代を生きる人の多くがかかえているのは、行き場のない「慢性的な不機嫌」です。情報伝達の差し迫った必要性があるわけでもなく、不快であることを伝えても事態は何も解決しないのに、無意味な不機嫌を世の中に撒き散らしている人があまりにも多い。

 この文章を読んで身に覚えのある人はいませんか。朝の通勤電車が人身事故で遅れたとき、そのイライラをTwitterやFacebookでつぶやいてしまった経験は?

 よく考えてみれば、不機嫌を表に出したところで物事がうまくいくケースは極めて少ないことがわかります。不機嫌だと仕事の生産性も落ちますし、建設的な話し合いを持つことも難しくなります。不機嫌を表に出すことは世間にとっても自分自身の人生にとっても「罪」である、と断罪するのは『不機嫌は罪である』(齋藤孝/KADOKAWA)です。

 湧いてきた感情を即座に文字にしたくなる気持ちはわかります。しかし、それを読んだ人はどのような気分になるでしょうか。TwitterやFacebookでそのような投稿を目にすると気分が滅入ります。あまりにもひどい内容だとそういう投稿をした人の人間性を疑ってしまうこともあるかもしれません。

 中には不機嫌というのは、自分がなりたいからなるのではない、周囲の状況や環境が不機嫌にさせるのだ、と考える人もいるかもしれません。そういう人は次のように考えてみるとよいのではないでしょうか。

機嫌というのは、理性や知性とは相反する分野のように思われがちですが、気分をコントロールすることは立派な知的能力の一つです。

 気おくれすることなく、不機嫌を他人に見せることのできる人の多くはおそらく自分のことをバカだとは思っていないはずです。バカでないのなら、自分の機嫌くらいコントロールできるようにならなければなりません。

 それではどのようにして私たちは自分の機嫌をコントロールすればよいのでしょうか。私たちは子どもの頃から「他人の気持ちを考えましょう」と教わります。しかし、著者は自分の機嫌をコントロールする方法として最初にするべきことは、意外にも「自分の気持ちを考える」ことだといいます。

 自分の気持ちがわからないままでは他人の気持ちなど思いやれないというのがその理由です。客観的に行動するためには自分の状態を細かくモニタリングできていることが必要です。自分の思考や感情のパターンを把握しておくと、不機嫌な感情が湧き起こった段階で冷静にその状態を見つめることができます。

 本書では気づいたやり過ごす緊急避難的な方法のほか、不機嫌の芽ができにくい状態をつくるための心の整え方、そして安定した状態を取り戻すワザを身につけるための方法が解説されています。

 他人に不快な思いをさせないために上機嫌でいることが必要なのでしょうか。そうとは限りません。上機嫌の最終目標は自分を上機嫌にするだけでなく、周囲もおだやかな上機嫌にすることです。機嫌は自分一人で維持するのはなかなか難しいこと。自分が上機嫌になることで、周囲も上機嫌にしてしまうのが狙いです。つまり、上機嫌でいることは自衛手段にもなるということです。みんなの機嫌がよくなれば、組織としてのパフォーマンスも上がるので結果としてみんながハッピーな状態になることができます。

 人は機嫌がいい人のところに集まります。上機嫌を心がけることで悩みの突破口が見つかったり、思わぬところで仕事に役立つ話が舞い込んできたりすることもあるかもしれません。上機嫌でいることは周囲を巻き込んで「よい流れ」を作り出すことでもあります。人生はよいことばかりとは限らないからこそ、上機嫌でいることが大切です。

 上機嫌でいるためのコツを知りたい人に一度は手に取ってみてもらいたい本といえるでしょう。

文=いづつえり