いまだ熱が冷めない「キミスイ」ブーム、そのワケは?

文芸・カルチャー

2018/9/30

 ここ数年、ネットから生まれた小説として最も知られているといっても過言ではない作品。それが通称「キミスイ」、住野よるさんの『君の膵臓をたべたい』(双葉社)だ。

『君の膵臓をたべたい』(住野よる/双葉社)

 本作は住野さんのデビュー作。学生時代から小説家を目指していた住野さんは、あるとき、小説投稿サイト「小説家になろう」に本作を投稿した。すると、それがまたたく間に話題を集め、書籍化が決定。出版後には「本屋大賞」第2位にもランクインし、若い世代を中心に絶大な支持を集めた。その後の活躍は言わずもがな。『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』(いずれも双葉社)、『か「」く「」し「」ご「」と「』(新潮社)、『青くて痛くて脆い』(KADOKAWA)と立て続けに新作を発表し、ヒットを飛ばしている。

 そんな住野さんの原点ともいえる「キミスイ」は、高校生の男女を主人公にした、青春ストーリーだ。その内容についてあらためて説明するまでもないとは思うが、友人のいない男子高校生の「僕」と、クラスの人気者でありながら重い膵臓の病を抱える少女・桜良との交流が瑞々しさをもって描かれている。そして、なによりも話題となったのはそのタイトルについて。『君の膵臓をたべたい』。

 一見、不穏な響きを持つ言葉だが、実はこれには深い意味が込められている。その真意に気がついたとき、読者は号泣するはず。誰かを大切に想うことを体現してくれたふたりの姿が切なく、そして美しい。

 本作はメディアミックス展開もさかんに行われている。2016年にはオーディオドラマ化され、2017年には、北村匠海と浜辺美波というフレッシュなふたりをメインキャストに据え、実写映画化。先日、地上波で初放送された映画を観て、感動を覚えた人も少なくないだろう。

 そしてなんと、9月1日(土)からは劇場アニメが公開された。主人公を演じるのは、注目の若手俳優・高杉真宙。ヒロインである桜良役には人気声優のLynnが抜擢された。淡いタッチの画のなかで、小説とも実写映画とも異なる味わいのふたりの青春が、あらためて描かれていくことになる。

 いまだ熱が冷めない「キミスイ」ブーム。この小説が、実写映画、アニメとカタチを変えて何度も世に送り出されるのは、そこに物語の持つ圧倒的なパワーがあるからだろう。もしも、実はブームに乗り遅れて一度も触れたことがない……なんて人がいるならば、これを機に、その世界観に浸ってもらいたい。切なくて、それでいて美しいその世界に触れたとき、きっと心のなかに大切な感情が芽生えるはずだから。

文=五十嵐 大

©住野よる/双葉社 ©君の膵臓をたべたい アニメフィルムパートナーズ