イケメン男子高校生2人が、突然兄弟に!! “猫系の兄”と“犬系の弟”の間でときめく生活

マンガ

公開日:2018/9/28

『きょうだいごっこ』(安斎かりん/白泉社)

 誰しも一度は、「もっと優しいお母さんが欲しかったな」とか「お父さんがもっとイケてたらよかったのに」とか「綺麗なお姉さんがいたら買い物に一緒に行けたのに」なんて、理想の家族像を想像したことがあるんじゃないだろうか。

 安斎かりんが描く『きょうだいごっこ』(白泉社)は、まさにそんな理想の家族を夢見る少女の物語だ。

 両親が共働きで忙しく、ほとんど家にいないためほったらかしにされていた主人公・璃央。一人っ子で遊び相手のいない彼女は、いつしか「もしも私にきょうだいがいたら…」と、妄想を膨らませるようになっていた。といっても、それは幼少期の話。16歳になった璃央は、だんだんと現実的な思考の持ち主へと育っていく。

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 だから両親の突然の海外転勤で、ひとり日本に置いていかれるとなったときも、仕事第一の両親に「体よく追い出されたんだ」と、たいして落ち込みもせずに納得してしまう。橘支部長のお子さん2人と住むようにとだけ言われ、伝えられたきょうだいの名前は、橘美弦と橘有紀。璃央はどんな姉妹なんだろうと思いながら、2人の住む家へと向かう。

 しかし、そこにいたのは、イケメン高校生の2人だった。やけに人懐こい犬系の弟・有紀(高1)と、冷たくて気まぐれな猫系の兄・美弦(高3)。名前で勝手に女子だと勘違いしていた璃央は、戸惑いながらも、3人での共同生活へと足を踏み入れる。

 とにかく喧嘩ばかりの有紀と美弦。璃央が思い描いていた理想のきょうだいの姿とは程遠い。部屋は汚いし、なかなか3人揃って食事すらできない。前途多難な同居生活の幕が切って落とされるのだ。

 ひとつ屋根の下、イケメン高校生と2人で共同生活。そんな設定だけ聞いてしまうと、つい胸キュンなシーンが連発する恋愛ストーリーのような印象を抱いてしまう。しかしこの作品は、まず璃央がずっと「きょうだい」に憧れていたことから始まる。作った料理を美味しいと言ってくれたり、辛いときに助けてくれたり、一緒に楽しい時間を過ごしてくれたり。まず、家族という存在に対する喜びが丁寧に描かれているのだ。

 もちろん、その上で胸キュンシーンも多く描かれる。同じ家で朝ごはんや夜ご飯をともにし、同じ高校に通い、誰よりも長い時間をともに過ごしている分、璃央は一見完璧すぎるイケメンな有紀や美弦の、ちょっと人間くさい部分や、隠れた魅力に気づき始める。そして、そうやって深く理解してくれる璃央に対して、有紀や美弦は、次第に家族以上の想いを抱き始めるのだ。

 家族としての絆が深まっていくと同時に、なんだか恋の予兆も感じ始める当作品。これから3人の関係性がどう展開していくのか楽しみだ。

文=園田菜々