「うちの会社にも女性の力は必要ですか?」その質問にズバリお答えします

ビジネス

公開日:2018/9/30

『働く女性 ほんとの格差』(石塚由紀夫/日本経済新聞出版社)

 ワーキングマザー、独身、非正規社員、専業主婦…女性はそれぞれの「働き方」でモチベーションのあり方を模索したり、ジレンマを抱えたりしているものだ。『働く女性 ほんとの格差』(石塚由紀夫/日本経済新聞出版社)は、日経編集委員の著者が、働く女性たちの本音と実態を明らかにし、その処方箋を示す1冊だ。

 著者は、企業の社内研修や自治体が主催するセミナーなどで、経営層・管理職を対象に講演を行っている。だが、「参加者は女性活躍に賛成の方ばかりではない」という。女性活躍について懐疑的・否定的な意見も出てくるそうだ。その意見を整理すると、以下の5つの“反論”のポイントが浮かび上がるという。本稿では本書から、その反論に対する「答え」を紹介していきたい。

(1)企業は、なぜ女性のために職場の性差別解消に取り組まないといけないのか?

 30年前、男女雇用機会均等法が施行されたとき、その目的は性差別解消がメインだった。しかしながら現在は「“総人口の減少”による労働力の低下をカバーするために、女性の力も必要」という考え方がある。つまり、性差別の解消のためではなく、企業を維持する経営戦略のために、女性の力が必要とされているのだ。

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(2)うちの会社は女性向け商品・サービスを扱っていない。女性の視点は不要だから社内の女性活躍は無用ではないか?

 女性の力は、業務の見直しや生産工程の効率化など、社内の「プロセス・イノベーション」にも大きく貢献する。(1)の観点と同様に、労働力を男性に頼るだけでは、人材を確保することが難しくなり、経営が行き詰まる可能性もある。

(3)女性は能力が劣るのでは? その女性を無理に管理職に登用するのは組織にとってマイナスではないか?

 昨今の組織内の部下育成においては「部下の悩みにやさしく寄り添い、成長を促す指導スタイル」が求められている。それは男性よりも女性のほうが長けているといわれている。女性ならではの性質が管理職の業務で活かされる場面も多くあるのだ。

(4)ダイバーシティは外国人やシニアも対象。なのになぜ女性ばかりに焦点を当てるのか?

 たしかに組織内で外国人やシニアなどを含めた多様性を進めていくことは重要だ。しかしながら、日本企業がいま直面しているのは働き手の減少である。よって、ダイバーシティの中でも、「女性」の活躍推進に取り組むことが喫緊の課題として迫っているのだ。

(5)女性活用に熱心に取り組んでも職場の軋轢などマイナス面の作用を強く感じる。それでもやらなければいけないのか?

「ダイバーシティの取り組みに短期的効果を期待してはいけない」と著者は唱える。ダイバーシティを進める初期段階で多くの組織が「職場の軋轢」に直面するのは、課題として織り込み済みだ。それに向き合い解決していくことが、経営の安定や企業価値の向上に繋がるという。

 以上、女性活躍に対する典型的な反論とその答えを見てきたが、著者によると、いずれの指摘や反論も、女性活躍に真剣に向き合っているからこそ浮かびあがってくる疑問だという。企業で活躍したいと日々頑張っている女性も、企業において女性に期待して活躍推進を担う担当者も、こういった根深い反論に直面するときが来るかもしれない。そういった問題を他人任せにするのではなく、きちんと自分の言葉で論理的に「女性活躍の必然性」を説明するためにも、本書を参考にして、ヒントを見つけてほしい。

文=ジョセート