食材から芸術作品まで…。返礼品も魅力的なクラウドファンディングの実例って?

暮らし

公開日:2018/10/2

『「ショッピングサイト」の新しいカタチ クラウドファンディングでおトク生活』(板越ジョージ/ゴマブックス)

 日本でも浸透しつつあるクラウドファンディング。何かの企画を実現したい起案者が、不特定多数の人たちから、資金を集める仕組みだ。近年では、日本国内でも「キャンプファイヤー」や「レディーフォー」など、関連するネット上のサービスが注目を集めている。

 アメリカを発祥とするクラウドファンディングだが、東日本大震災をきっかけに認知度を向上させた経緯もあり、日本国内では主に“寄付する”というイメージが根強い。しかし、本国のアメリカでは“ショッピングサイト”として定着していると教えてくれるのは、国内外でクラウドファンディングの啓発に努める板越ジョージさんによる著書『「ショッピングサイト」の新しいカタチ クラウドファンディングでおトク生活』(ゴマブックス)である。

 クラウドファンディングについての基礎から、さまざまなジャンルの実例を凝縮した一冊。本書を読むと、クラウドファンディングを取り入れて充実したライフスタイルを手にしてみたくなる。

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◎おいしいものが食べられる? 食材をテーマにしたプロジェクトの実例

 サイトごとに名称が異なるものの、クラウドファンディングのプロジェクトによっては「リターン」や「チケット」と呼ばれる返礼品をもらえる場合がある。これを活用してみようというのがまさに本書の趣旨であるが、近年すっかり定着してきた“ふるさと納税”のように、お得なアイテムが手に入れられるケースもある。

 今年5月、クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」上で募集されていた「絵本とアスパラガスをセットでお届け!! 『たべるえほん』プロジェクト」はその一例である。

 このプロジェクトは、アスパラガスの出荷量が全国2位である佐賀県の起案者が企画したもの。みずから減農薬農法で育てている「森のアスパラ」と、アスパラガスを主役にした絵本『たべるえほん』をセットにして、子どもたちに「食材の美味しさ」を伝えたいという思いのもとで立ち上げられた。

 支援者はプロジェクトへ支払った金額ごとにさまざまな返礼品を手にすることができるが、この企画では3000円コースで「お礼のお手紙と絵本の絵柄のポストカード」、100万円コースで「太良町出身のフレンチシェフが出張料理をします!」など、プレミア感も味わえる全18種類の返礼品が用意されたが、最終的に支援者の数は151人に達し、110万1500円の資金が集まった。

 返礼品をもらえるというのはもちろんだが、このように、見知らぬ誰かの思いへ資金を提供できるというのもクラウドファンディングの特徴の一つである。

◎ニューヨークで“筆文字絵巻”を…。アーティスト発信のプロジェクト

 料理やモノなど、あると嬉しいものが手に入れられる一方で、アーティスティックな返礼品をもらえたプロジェクトの実例もある。筆で巻き物に文字やイラストを描くという“筆文字絵巻”を得意とするアーティストが提案した「日本文化をNYで発信! 楽しく『筆文字絵巻』作りを体験してもらうプロジェクト!」は、その一つである。

 このプロジェクトは、2015年4月に「キャンプファイヤー」上で提案されたものだ。起案者は、筆を使い墨と朱色でokko graphicというイラストや文字を描き出す気鋭のアーティストで、日本古来の伝統を織り交ぜた試みをニューヨークの人びとへ実際に体験させたいという願いが込められていた。

 用意された返礼品は、500円コースの「御礼の手紙と秘密のfacebookグループへの招待」や、5万円コースの「支援者と話しながら2時間で10枚前後のイラスト議事録(グラフィックレコーダー)」など13種類。なかでも人気だったのは、1万円コースの「支援者の好きな言葉を描き添えた、起案者による手書きの龍のイラストが手に入る」ものだったという。

 支援者数は最終的に40人、総額は23万4500円を達成。その後、起案者はこのプロジェクトでの成功をきっかけに、ニューヨークでセミナーや個展を開催し、現地でも一躍有名になったそうだ。

 人のアイデアを源にするクラウドファンディングは、プロジェクトのジャンルが多岐にわたっている。誰かの夢や思いへ資金を提供して、返礼品をもらうというライフスタイルはさまざまな充実感を与えてくれるはず。本書はもちろん、一度ぜひ関連サービスのサイトものぞいてみてほしい。

文=カネコシュウヘイ