「我々が生きる時代はどう変わる?」今話題の落合陽一が説く、アップデートされた世界の姿

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公開日:2018/10/5

『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(落合陽一/PLANETS)

 AIやIoT、5GにAR・VRといったさまざまな技術によって変わりゆく現代。日本、そして世界が抱えている現代の諸問題も重なって、これからの世界がどのように変わっていくのか、なかなか先行きの見えない世の中になってきている。2000年代初めには、スマートフォンやアプリという概念がこれほどまでに広がることを予想している人は誰もいなかっただろうし、猛暑によりクーラー必須の夏がくることも想定していなかっただろう。数年後にはどう変化しているか分からない、それが現代である。

 そのような時代だからこそ、これからの時代をどう乗り越えていくのか、明確なビジョンを持って生きていくことに意味があるのではないだろうか。『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』(落合陽一/PLANETS)は、これからの世界を見据え、これからの時代を生きていくための方向性を確立するのにうってつけの本だろう。今話題の研究者落合陽一氏が近未来像を読者に提示する、説得力のある1冊となっている。

■著者「落合陽一」は何者か

 本書の著者である落合陽一氏は、2017年のTBS系『情熱大陸』への出演以降、「現代の魔術師」とも呼ばれ注目度は急上昇している。彼が一体どのような人物でどのようなことをしているのか、その肩書きの多さや生活スタイルゆえに正確に理解している人は少ないだろう。落合陽一氏は大学教員であり、メディアアーティストであり、企業のCEOでもある。研究成果も高い評価を得ており、多数の賞を受賞したりしているかと思えば、アーティストとして個展を開いたりもしているのだ。なかなか実態のつかめない落合陽一氏であるが、そんな彼がこれまでの研究や経験、考察の結果を惜しみなく詰め込んだのが本書である。

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■デジタルネイチャーとは何か

 そもそも、タイトルになっている「デジタルネイチャー」とは何だろうか。デジタルネイチャーとは、落合陽一氏が前著『魔法の世紀』(落合陽一/PLANETS)で定義した概念である。簡単にいうなら、コンピューターなど人工物が十分に発達し、自然のものと区別がつかない世界のことだ。そこでは、人と機械、自然と映像の区別がつかない。たとえば、将来ディスプレイの解像度が上がることに加え、インターネットの通信速度も飛躍的に上昇したとする。すると、会議室に集まりミーティングを行うにしても、目の前の相手が本人であろうとモニター越しの映像であろうと、ほとんど差はなくなり見分けはつかなくなるのである。たとえ映像であったとしても、相手と握手しようと手を伸ばしモニターに触れたとき、はじめて相手が映像であったことに気がつくのだ。目の前の世界が映像か現実か、人間かAIか、すべては混ざり合い区別がつかなくなる。

■近代の先にある新しい世界へ

 また、デジタルネイチャーという概念を通して落合陽一氏が考えたいのは、「近代」をどのようにして乗り越え世界をアップデートしていくか、ということである。1789年のフランス革命、産業革命を経て戦争終結までの期間に、現代社会を支える「社会」「国家」「大衆」といったさまざまな概念が作られた。終戦から70年を超えた現在においても、世の中は近代に描かれた概念の中で動いている。本書では、デジタルネイチャーで示された「テクノロジー」の側面から、近代を乗り越え世界をアップデートする可能性を探っている。

 テクノロジーが本書の軸ではあるものの、論調は物理学、経済学、芸術、東洋思想までおよび学習意欲も刺激されること間違いなしだ。どっしりと腰を据えて、ひとつひとつ噛み砕きながら読み進める必要がある1冊だが、これからの時代を生き抜くためには必読の名著だろう。

文=くるる