育児と経営は同じ…? 若きビジネスリーダーたちの型破りな子育て

出産・子育て

公開日:2018/10/3

『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』(宮本恵理子/日経BP社)

 世の父親たちは仕事で忙しい。だから育児に十分に関われない。もちろん母親だって忙しいことは、父親たちはわかっている。しかし、「自分だって育児に関わりたいけれど忙しくて関われない」ことを理解してもらいたい、と願っている父親はかなりの数、いるのではないだろうか。

『子育て経営学 気鋭のビジネスリーダーたちはわが子をどう育てているのか』(宮本恵理子/日経BP社)は、複数の経営者やビジネスリーダーたちに「自身の子育て」について生の話を聞いてまとめた、インタビュー集だ。登場するのは40代以下と若く、事業が成長を続ける中で多忙を極めている父親たち。彼らの育児に対する考え方や姿勢は、世の忙しい父親たちにエールを与えそうだ。

 本書に登場する父親たちの話を聞く中で、共通していると思われる考え方は、ずばり「子育てと経営は同じ」ということ。

advertisement

 例えば、2015年にIoTのプラットフォームを提供するソラコムを創業した玉川憲氏の話によると、玉川家では毎年の年末年始に夫婦で「子育てビジョン」を確認し合う。子どもの個性、得意・不得意の違いなどを配慮した上で、1年の強化ポイントを決める、というのだ。移動中の車中で話し合う、というところが、多忙な経営者らしくリアリティある逸話だ。氏にかかると、育児も経営企画と同じように中長期的なビジョンをもって、アプローチされる。

 経営者でこそないが、経営学を教える早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏は、組織と子どもに共通しているのは「自己肯定感を高めることの重要性」だと述べている。

チャレンジングな事業に立ち向かうには、「自分はやればできる」という自信や、セルフエフィカシー(自己効力感)を備えていることが重要だということは、経営学の研究でも分かっていることです。

 確かに、自信や自己効力感に溢れたたくましい子どもが未来を切り開く姿は、イメージしやすい。入山氏は、さらに続けて、この「自己肯定感」を子どもの中で育てるために、「世界中の人とコミュニケートできる共通言語(プロトコル)」を持たせたいと考えている。これがあると、挑戦できるフィールドが広がるからだ。

 氏によると、この共通言語は4つある。1つ目は現時点で世界最大の共通語である「英語」。2つ目は、これも世界共通の「数学」。3つ目は「プログラミング言語」。そして4つ目は「表情」。氏は、感情にひも付いた「表情」は、人種や文化を問わず、すぐに交換し合える最強のプロトコルだと考える。入山家では、楽しいときには家族で笑い、悲しいときには思い切り泣くことを良しとしているそうだ。

 本書に登場する10人の経営者やビジネスリーダーたちはいずれも若く、一昔前の価値観に照らし合わせると異端に感じる部分があるかもしれないが、だからこそ、世の忙しい子育て世代の心に響く部分がきっとある。

文=ルートつつみ