池上彰さんも嫌いだった!! ニュースがわかる、大人のための「高校世界史」

社会

2018/10/5

『ニュースがわかる 高校世界史』(池上彰、増田ユリヤ/ポプラ社)

 ここ数年、大人向けの「世界史本」がブームだ。中高で学んだはずなのに、当時は暗記に追われて今じゃさっぱり、どうにか生きた知識にできないものか…大人たちのそんなジレンマが「学び直し」に向かうのだろう。

 そこで朗報! このほど登場した『ニュースがわかる 高校世界史』(ポプラ社)は、リアルなニュースと苦手になりがちな現代史を結びつけてくれる1冊だ。著者はわかりやすいニュース解説で定評のある池上彰氏と増田ユリヤ氏。「世界史の教科書は読むだけではわからない」というおふたりが、教科書的な記述の裏の因果関係を解きほぐし、暴れん坊「ドナルド・トランプ米大統領」などのリアルな人物たちと結びつけてくれるからおもしろい。

 たとえば世界恐慌。「1929 年にニューヨークで株価が暴落」と暗記したものだが、因果関係まで把握しているだろうか。第一次世界大戦の戦場にならなかったアメリカは欧州向け輸出で好景気。自動車産業の発展で自動車通勤が可能になった人々はこぞって郊外にマイホームを持つようになり地価も上昇。1920年代後半からは不動産と株価が急上昇する「空前のバブル」を謳歌していたという。そこにある日、株価の下落に恐怖を感じた投資家が売りの嵐を呼び起こし突然の大暴落へ――どこか日本の「バブル」を彷彿とさせる様相を知ると、一気に歴史が身近になってくる。

 この世界恐慌が極端な保護貿易を招き、ひいては第二次世界大戦の引き金に。それらの反省をこめて戦後に作られたのがWTOなどの「貿易機関」だが、それらを再び極端な保護政策でないがしろにしようとするのがトランプ米大統領の存在だ。こうして「歴史の流れ」を踏まえて俯瞰すると、彼の横暴が引き起こしかねない悲劇も見えてくる。

 この他、ナチス台頭史から極端な民族主義の成立背景を考えたり、歴史的なアメリカの思想からトランプ流「アメリカ・ファースト」を読み解いたりと、気になるポイントを「歴史に学ぶ」ことができるのがうれしい。ちなみに池上さんも学生時代は世界史が嫌いだったそうで、解説のポイントもツボを押さえている。「世界史は先生が大事」とのことだが、この本が相当おもしろい先生になってくれるのは間違いないだろう。