購入して“いい気分”になる商品って? 「エモいから買おう!」と思わせる秘密

ビジネス

2018/10/3

『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング』(廣中直行/光文社)

 ゆとり世代の筆者は「エモい」モノにめっぽう弱い。「あ、エモいな」という商品を見ると、気分良く財布を軽くしてしまうこともしばしば。だが、「そもそもエモいモノとは」と問われても、回答に困る。平たく言ってしまえば、「ああ、なんか、絶妙にいいな」と思わせてくるモノ、といったところだろうか。

 ずいぶん適当で投げやりな消費行動だと思われるかもしれないが、多くの消費者心理とはそういった「気分」の積み重ねだ。そしてこの「ああ、なんとなくいいな。買いたいな」という気持ちが何たるかを追求していくことが、マーケティングでは欠かせない。

 店先に並ぶ商品を見て「いいな」と感じるとき、深く考えていないようでも無意識領域では実にさまざまなことが起こっているらしい。これは脳科学の研究分野だ。そしてこれを解明していくと、マーケティングは飛躍的に向上するのではないか。そうした発想から脳科学と商品開発やマーケティングを組み合わせた研究、「ニューロマーケティング」なる学際領域が存在する。

 ニューロマーケティングは「脳」に関わる研究のため、企業として取り組むには、いかんせんコストがかかり、よほどの大企業でもなければ難しいだろう。そこで、多くの人が参考にできるニューロマーケティングの「法則」を説明するために、本稿では『アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか? 心をつかむニューロマーケティング』(廣中直行/光文社)という書籍を紹介したい。

■あらゆるモノが嗜好品化している

 マーケティングやブランディングの説明でよく取り上げられる「2種類の価値」について見ていきたい。

 ひとつは「機能的価値」。これは客観的な数値で表すことができる性能のことで、たとえば自動車であれば、加速性能や燃費、コーナリング機能などがこれに該当する。

 そしてもうひとつが、「情緒的価値」だ。これは商品が人間の「こころ」に訴えかけるメリットのことを指す。車を運転する楽しさや心地良さ、所有することのよろこびや満足をユーザーに提供する価値のことだ。両者のうち、近年特に重視されているのがこの「情緒的価値」だ。

機能的価値の追求は今日でも続いているが、今や情緒的価値の時代である。(本書17頁)

 本書はそう前置きしたうえで、1998年に登場したカラフルで可愛らしいiMacの成功例を紹介している。当時パソコン市場にはびこっていた「パソコンの外観なんかどうでもいいじゃないか(それよりもスペックが高いことが重要だ)」という機能主義の考えをアップルは見事に粉砕し、消費者に情緒的価値を訴えたことでヒットにつなげた。

 こうした傾向は、パソコンのみならず、スマートフォン、家電、家具、文房具、台所用品…などなど、身の回りのありとあらゆる商品・サービスに見られる。「快適さ」「おもしろさ」「楽しさ」「使うよろこび」に対する期待感を刺激され、商品を買う。これは普段のご自身の消費行動を振り返ってみても納得がいくのではないだろうか。この現状はまさに、「あらゆるモノが嗜好品化してきた」ことを表している。

 ここで紹介したものは書中のほんの一例に過ぎない。本書は多くの「脳科学の成果」と実際のビジネスの成功例とを結びつけ、消費者に「あ、いいな」と思わせるための法則を浮き彫りにしていくものだ。

 本書の最終章ではタイトルとなっている「アップルのリンゴがかじりかけの理由」も明かされている。ぜひそれを楽しみにしながら、本書を手に取って読み進めることをおすすめしたい。

文=K(稲)