北海道では細長いのに、岡山では丸いものって…?【日本全国をくらべてみた】

暮らし

公開日:2018/10/7

『くらべる日本 東西南北』
(おかべたかし、山出高士/東京書籍)

 所変われば品変わる、とはいうが、タイトルにある「北海道では細長いのに岡山では丸いもの」とは、何のことか想像がつくだろうか? 実はこれ、きび団子のこと。きび団子とは、桃太郎が鬼退治の際、おばあさんに用意してもらい、腰につけていったあのきび団子である。このきび団子欲しさに、道中で出会った犬や猿、キジに至るまでが仲間に加わり、鬼退治に向かうことになったのが桃太郎のお話の流れだ。

 ところで、桃太郎は桃から生まれた。桃は岡山の特産品である。桃太郎にちなんで、今やきび団子も岡山のお土産のひとつとして知られているわけだが、岡山のきび団子は丸い形状をしている。ところが、『くらべる日本 東西南北』(おかべたかし、山出高士/東京書籍)で見ると、北海道のきび団子は棒状になっているのだ。実は、北海道のきび団子は、私の住む地域では駄菓子屋でもよく置かれている。子どものおやつとして定着してきたものなのだろう。

 旅行でよその土地を訪れたとき、文化の違いに驚くことはないだろうか? 海外ならまだしも、同じ国内でも地域によって違うものは意外に多いものだ。日用品、食べ物、マナーなどの違いは大きい。

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 が、しかし、だ。旅行で行っただけならまだいい。たとえ間違いがあっても、その辺は所詮「観光客」で済まされてしまう。第一、「旅の恥はかき捨て」なのだ。帰ってからの笑い話にひとつとして良いお茶請け話にもなるだろう。だが、そこに住んでしまうとそうはいかない。転勤や結婚など、地域の人と交流することになって初めて気づくものも多いからタチが悪い。冠婚葬祭には、その違いが如実に表れる。知らずに自分の出身地のマナーで応対してしまうと、「あそこのお嫁さんは」などと言われてしまうこともあるのが日本の怖い部分だ。

 さて、マナーでいえば、日常的に目につきやすいのが食事。特に食器の位置、箸の持ち方と、日本らしい食事のマナーがある。食事ひとつで「お里が知れる」ことも多い。しかし、本書で最も驚いたのは、東京と大阪の汁物の配置だ。実は、自分が幼少期から口すっぱく母に言われていた食器の配置が汁物の位置。関東ではご飯ものは向かって左、汁物は右がマナーで、逆の配置はいけないとされる。ところが、大阪では汁物がご飯ものの上に縦に並ぶのだから、これには絶句。ただ、本書では「定食」として比べられているため、トレーの問題もあるかもしれない。そこで、一般家庭ではどうなのかネットで調べてみると、大阪を中心に関西から九州の一部も、ご飯ものと汁物を縦列させるのが多いことが分かった。いやあ、知らずに嫁いでしまうと、嫁姑のもめごとの原因にもなりそうな違いっぷりである。

 全ページにさまざまな食べ物、日用品、風鈴や標識に至るまでが写真で紹介され、分かりやすく比べられている。写真撮影は山出高士氏だ。ほとんどは写真による比較だが、風習の違いなどは文章だけで紹介されているものもある。中でも驚いたのが「行けたら行く」というもの。関東の場合は、実に80%もの人が実際に行くという。「行けたら行くね」とは、自分もよく使う。確かに、こう回答するときの心境としては「できれば行きたい」と考えていることは多く、標準的な関東人というわけだ。ところが、京都の場合は違う。実際に行くつもりがあるのは5%程度だという。つまり、京都の人の「行けたら行く」は、やんわりとした断り文句なのだ。

 本書は、「え? そうなの?」と驚くものもあるが、ほとんどは楽しみながら見ることができる。地域別の醤油のラベルや色なども面白い。味覚には地域性が出やすいだけに、これも他県の人と交流するときには覚えておきたいポイントだ。

文=いしい