【年代別に聞いた!】初デートで見た映画は何? 相手とはその後どうなった?

恋愛・結婚

公開日:2018/10/8

『デートで初めて行った映画は何ですか?』(柴田こずえ/岩崎書店)

 デートの定番スポットとなっている映画館だが、案外、作品選びは難しい。カップルが2人とも楽しめる内容でなくては、上映後に気まずい雰囲気が漂ってしまう。そのため、付き合い始めで、お互いの好みがわかっていない頃ほど映画館デートは緊張しがちだ。ただ、成功しても失敗しても、時間が経てば一緒に映画を観たことは良い思い出に変わる。

『デートで初めて行った映画は何ですか?』(岩崎書店)は年代ごとに、カップルで初めて観た映画の思い出を集めた本である。若い読者は、これから恋人と映画を観るために押さえておきたい注意点を学べるだろう。一方、中高年の読者なら、映画館で一喜一憂していた時代を振り返ることができる。本書のエピソード集から、恋人との距離が縮まる前のドキドキを思い出してみよう。

 まずは、なんといっても、若者ならではの「ぎくしゃくしたデート」が微笑ましい。イラストレーター・たなかみさきさんは高校時代、先輩と『木更津キャッツアイ』を観に行った。宮藤官九郎脚本のTVドラマの劇場版である。今では恋人とラブストーリーを観たいというたなかさんだが、学生時代は彼氏とラブシーンで気まずくなるのが怖かったという。あえて、楽しく観られるコメディを選ぶあたりが学生ならではで甘酸っぱい。

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 20歳のS.O.さんは好きな男性が恋人と別れたと知り、すぐ映画館デートに誘う。選んだ作品は大ヒット中だった『君の名は。』だ。「映画館はカップルばかりだろうから、一緒について来てほしい」という誘い方も含めて、若さを感じさせる。その後、映画館デートを繰り返すうち「本物の恋人に間違われてうれしかった」など、乙女らしい感想が飛び出す。みずみずしい恋愛が日常にある年代ゆえのエピソードだ。

 青春時代からやや遠ざかってしまった世代は、当時を冷静に思い返せるようにもなる。39歳のM.K.さんは、高校時代、意識していた男子と映画の2本立てを観に行った。しかし、部活終わりの男子は空腹をごまかすため、水をがぶ飲みしてデートに挑んだという。結局、付き合うまでにいたらなかった関係を、M.K.さんはこう説明する。

映画当日の「水のがぶ飲み」が物語っている感じなのですが、友だちとして遊ぶのは楽しくて好きでも、もう一歩先に行くと、少し丁寧に女の子らしく扱ってほしかったんでしょうね。

 もちろん、高校生だった男子にそこまで気配りができなかったのも当然で、映画館デートはほろ苦い思い出を残すこともある。

 作品の感想や鑑賞態度で、好きな人の意外な一面に幻滅する可能性もある。48歳のM.S.さんは学生時代、気になる男性と『ドゥ・ザ・ライト・シング』を見に行った。黒人差別がテーマで、斬新な映像感覚や音楽のセンスが話題になった一本である。ところが、上映後に彼は「こういうの観たかったの?」と言ってきた。感性の違いを突きつけられたようで、M.S.さんは彼と発展しないまま疎遠になってしまう。

 66歳のS.A.さんは若い頃、当時の彼氏と『続・男はつらいよ』を観た。しかし、上映中「ガハハハハ」と大声で笑う彼が気になってしまう。その後、だんだん思いが冷めてきたS.A.さんは彼の笑い方が嫌なのだと気づかされた。『男はつらいよ』シリーズのように、観客それぞれが違った感想を抱くタイプの映画すら、自分だけの感想を押しつけるように笑う彼とやっていく自信がなくなったのだという。彼は「人の気持ちに寄り添えないのではないか」と。

 名作と評価されている映画も、「デート」という条件が加われば、まったく見え方が変わってしまう。単なる芸術鑑賞の時間ではなく、パートナーに自分自身が試されている場合すらあるのだ。一方、世間での評価はあまり高くなくても、好きな映画を共有できる相手となら楽しい時間を過ごせる。初めての映画館デートは、2人の心の相性を試すためにぴったりの機会なのである。

文=石塚就一