ありえない女の傲慢さ!! 理不尽な世の中に因果応報をつきつける、衝撃コミックス『自分勝手な女たち このベビーカー見えませんか?』

マンガ

更新日:2018/10/9

『自分勝手な女たち このベビーカー見えませんか?』(河東ますみ/笠倉出版社)

 世の中、因果応報であってほしいと大半の人が思っている。だって“いい人”として生きていたって損することがしばしばだ。人に迷惑をかけてはいけません、されて嫌なことをしてはいけません。子どものころに習ったまっとうな倫理を、守らないどころかのうのうと生きている人は多い。自分勝手な人はいつか痛い目をみると思っていないとやっていられない。そんな人たちのストレス解消をしてくれるのが、マンガ『自分勝手な女たち このベビーカー見えませんか?』(河東ますみ/笠倉出版社)である。

Ⓒ河東ますみ 笠倉出版社

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『自分勝手な女たち このベビーカー見えませんか?』

 このマンガに登場する女たちは、まあひどい。「子連れなのよ 優先してくれるのが当たり前でしょう?」と、ベビーカーで足をひいても、満員電車で迷惑かけても、幼い子どもがいればなんだって許されると思っている女。「名前書くだけなんだから別にいいじゃん」と事あるごとに保証人を押しつけてくるのに頼まれれば「めんどくさいからやだ」と断る女。そして最後は、“かわいい私”が泣けばすべて済むと思っている女…。ここまでの女たちに現実世界で出会ったことは、幸いなことにこれまでないが、「ありえない!」と一蹴できないおぞましさがあるのである。

Ⓒ河東ますみ 笠倉出版社
『私の人生保証して?』

 なぜなら、おそらく女性ならば誰もが知っている。子どもや涙を盾に結局は自分の欲を押し通すことしか頭にない女の自己顕示欲や承認欲求が存在することを。その萌芽となる我欲がそこかしこに満ち溢れていることを。エスカレートしたらあの子もこの子もそうなりかねない、そして男はたいていの場合その本性に気づかず「かわいい」を盾に許してしまうことも全部、知っている。

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 だからせめてマンガだけでは救われたい。因果応報はあるのだと、他人の善意にあぐらをかいていいとこ取りをするような人が、まかりとおるような世の中ではないのだと実感したい。本作は、いうなれば現代版の『笑ウせぇるすまん』。それほどまでに現代社会はストレスを抱えているし、理不尽に溢れている。

Ⓒ河東ますみ 笠倉出版社
『泣いて奪っちゃいけないの?』

 ベビーカーの子どもを盾にありとあらゆる優遇をもぎとってきた女は、他人どころか我が子の権利に嫉妬するようになる。“娘のため”を大義名分に他人の善意をむしりとってきた女は、その善意が自分自身の価値ゆえだと錯覚する。涙を安売りしすぎた女は、客観性を見失う。愚かさゆえに身を滅ぼす女たちの姿に、私たちは嗤う。だがその哄笑の裏側に、報いを受けた女たちとなんら変わりのない傲慢さが潜んでいることにどれほどの読者が気づいているだろう。

 自分だけはちがう。その勘違いからすべては始まる。スカッとし、おもしろいと心躍らせる我が身こそがおそろしく、それでも中毒のように読まされてしまう、女の業がここには描かれているのである。

文=立花もも

自分勝手な女たち このベビーカー見えませんか?』
作家:河東ますみ
出版社:笠倉出版社
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