10代に観てほしい「人生を変えるアニメ」――アニメ監督、人気声優、小説家らが本気で薦める!

アニメ・マンガ

2018/10/8

『人生を変えるアニメ (14歳の世渡り術)』(河出書房新社)

 日本のアニメーションはたびたび「作画クオリティが高い」「産業として巨大」という文脈で称賛されがちだ。しかし、本当に素晴らしいのは「人間が深く描かれていること」ではないだろうか。ネットやレンタルショップで山ほどアニメのタイトルが並んでいる今、我々は単なる消費の対象として作品に接してしまうようになっている。それでも、真剣に向き合えば、観る人の人生を変えてしまうほどの力を持ったアニメもたくさん生み出されているはずなのだ。

 そして、それほどの傑作アニメはできるだけ早いうちに観てほしい。人生に悩み、自分について考え始める年代にこそ、キャラクターの生き様は憧れと目標になりえる。『人生を変えるアニメ (14歳の世渡り術)』(河出書房新社)は、各界の成功者たちが、思春期の少年少女におすすめするアニメ作品を紹介していくガイドブックだ。あの有名声優も、芥川賞作家も、かつては悩める14歳だった。だからこそ、今を生きる14歳にも寄り添えるのだ。

 声優の平川大輔さんは、出世作である『巌窟王』について語る。平川さんが演じたのは主人公・アルベールの親友であるフランツだ。『巌窟王』は、大人たちの怨恨が、子供たちの人生すら狂わせていく物語である。それでも、アルベールやフランツたちは復讐の連鎖を断ち切り、自分たちの未来を自分たちで切り拓こうとする。フランツの姿は、演技者としての自分に不安を抱えていた若手時代の平川さんに重なった。

自分自身の道を歩き始める、誰だって不安になるその瞬間に向き合っている人がこの作品を観てくださったら、その人にとってもきっと、大切な作品になると信じています。

『この世界の片隅に』『君の名は。』『映画 聾の形』など、高く評価された近年のアニメ映画も紹介されている。では、それらの作り手はどんなアニメに影響を受けたのだろう? 『この世界の片隅に』監督の片渕須直さんは、10代の終わりに再放送で観た『母をたずねて三千里』を紹介する。9歳の少年マルコが、イタリアからアルゼンチンへと一人で旅をする壮大な物語だ。自分の足で生きることの怖れを描きながらも、力強いマルコの成長が感動を呼んだ本作は、「いずれは何者かになりたい私自身」への賛歌だったと片渕さんは振り返る。

 小説家の羽田圭介さんは、やや意外な選択をしている。羽田さん自身が14歳の頃に見ていた『BLUE GENDER ブルージェンダー』というSFアニメだ。コールドスリープから目覚めた主人公は、すぐ化け物との戦闘に巻き込まれる。魅力的な味方キャラクターたちは、あっさりと残酷な死を迎える。かなりハードな内容だが、羽田さんはむしろ「溜飲が下がる」と解説する。自然災害や経済の動向に怯えて生きる日本人にとって「人生はなるようにしかならない」と思わせてくれるからだという。将来に不安を抱えた10代には、こういう形の前向きさも必要だろう。

 そして、10代の読者からすれば、同世代が活躍するアニメにこそ深く共感を覚えるはずだ。小説家の坂上秋成さんは、2018年に放送され話題を呼んだ『宇宙よりも遠い場所』について書く。坂上さんは女子高生4人組が南極観測隊に参加する本作を「私たちの生きる現実を描きながら、そこに生じる裂け目と真っ向から向き合い、現実の見え方そのものを変えてしまう」作品だと評する。このアニメは、人間的に優れたキャラクターたちが現実を変える「ありふれた物語」ではない。登場人物たちは弱さを抱えながらも、批判や苦しみに立ち向かっていく。自分次第で、暗く見えていた世界が明るく見え始める可能性を指し示してくれるのだ。

 そのほか、詩人の最果タヒさん、アイドルの西田藍さん、『ハイスコアガール』などのマンガ家・押切蓮介さんたちが「人生を変えたアニメ」について熱く語っている。10代の読者はもちろん、かつて10代だった頃の自分に立ち返りたい読者にも、心に刺さる作品が見つかるだろう。

文=石塚就一