寝ても取れない疲れの取り方「心と体を正しく休める方法」

暮らし

2018/10/10

『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(川野泰周/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「土日にゆっくり休んだはずなのに、疲れがなかなか取れない」「体を休めていても、考え事や悩み事が頭から離れない」「朝起きた瞬間から、もう疲れている」——こういった精神的な疲労感に悩まされることはないだろうか。

 精神科医でありながら、禅僧でもある川野泰周氏は、「心の疲れ」は医学的にみると「脳の疲弊」にあたると指摘。著書『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、「脳の疲弊」のメカニズムや対処法を詳しく解説している。

 脳をゆるやかに酷使し続けていると、集中力、やる気、睡眠の質などが低下してしまうという。脳の特性として、ひとつのことに集中するシングルタスクであればそれほど疲れず、むしろリフレッシュされることが知られている。ところが、集中することが複数になるだけで、脳の疲弊が始まるという。パソコン作業、インターネット、SNSなどに囲まれた日常生活は「無意識のマルチタスク」の連続だ。

 脳の疲弊によって何が起きるのか。自律神経が乱れ、下痢や便秘、咳、じんましんなどの症状が現れるほか、ストレスを自覚できずに感情が薄れてしまう失感情症に見舞われることがある。

 これらの根底には、自己肯定感の低下があるという。日常で自分では抗うことができないものに従うことで、どんどん疲弊し、自己肯定感が下がってしまう。反対に、自分がやりたいと思っていた行動をとることができると、気分が晴れたように感じたことはないだろうか。同じように、些細なことであっても自分をコントロールする行為を心掛けるだけで、自己肯定感をアップさせる効果があるそうだ。

 坐禅のような、「今、ここにある、たったひとつの作業に意識を集中させる」ことをマインドフルネスという。たとえば、『孤独のグルメ』はマインドフルネスのお手本だ、と川野氏は述べている。じっくりと料理を眺め、「色合い」「盛り付けの様子」「香り」などを心の中で言葉にする。このように食べることに集中する行為は、マインドフルな食べ方になり、まぎれもなくシングルタスクとなるという。この切り替えが重要で、それだけで脳はしっかりと休息がとれるというのだから驚きだ。

 そのほか、本書では「質の高い睡眠のコントロール方法」「コミュニケーションの無毒化」など、最新科学と禅の精神から導き出した、誰でも簡単に疲れを取りのぞける41の方法が紹介されている。心と体の正しい休め方を学び、自分をクリアにコントロールしていけば、モヤモヤとした疲労感はいつのまにか軽くなっていくはずだ。本書がその手助けとなることは間違いないだろう。

文=野呂圭