男性はいつ「父親」になれるのか? 夫が知っておくべきこと

出産・子育て

2018/10/8

『ふたりは同時に親になる』(狩野さやか/猿江商會)

 私たち男性はいつ父親になれるのか。親には子どもが生まれたらすぐなれるのだろうか? 夫婦ともに? これが本稿のテーマである。そこで紹介したいのが『ふたりは同時に親になる』(狩野さやか/猿江商會)だ。

 最初に書いておく。ひょっとすると産後の家庭をもつ父親の多くが、本稿を読むだけで「耳が痛い」と感じるかもしれない。ただぜひ最後まで読んでほしい。きっと“父親になる”ためには理解しておくべきことだったのだと分かるはずだ。

■あえて書く、母親が育児を辛く感じる理由は“夫”である

 まず、近年ネットでも話題の「なぜ母親がハードすぎる育児を強いられるのか」を理解しよう。本書によれば、日本の男性の育児休業取得率(平成28年度)はたった3%だそうだ。これはあまりにも少なすぎる。しかも休日の取得日数は7日以内が7割なのだ。これではまるで、ちょっとした旅行程度だ。

 末子が5歳以下の家庭で「家事と家族のケアにかける時間」は、欧米とほぼ同じ。にもかかわらず、この時間の夫婦の比率は、妻が85%なのだ。共働き家庭が増えている現代の日本で?と不思議に思ってしまう。さらに5歳以下の子どもがいる夫は、週60時間以上の長時間労働をしている割合が高いというデータまである。

 これらの結果から、産後に必要とされる時間が増えるにもかかわらず、日本人の夫は仕事を減らさない傾向がみてとれる。

 もちろん反論もあるだろう。会社に「育児休暇を取得できる空気がない」ということも考えられる。あるいは「子どもが生まれたのだから稼がないと!」と、強い責任感が生じ、長時間勤務をしているのかもしれない。加えて男性が家事育児を優先することを軽んじる「パタハラ」(パタニティハラスメント)が、職場にある可能性も否定できない。

 確かにこれらは現実だろう。だが仕事をしっかりこなしている夫だからこそ、考えるべきことがある。産後、妻は環境の激変で追いつめられている。それは本書より引用するとこのような表現になる。

家で隣にいる妻は「ハッピーに育児と家事をしているママ」なのではなく、「仕事のプレッシャーと長時間労働でボロボロになっている同僚」だと思うくらいでちょうどよいでしょう

 朝から晩まで24時間ケアをし続ける育児を、ブラックな仕事になぞらえている。この職場環境を改善できるのは、一緒に家庭を作っている夫しかいない。夫が積極的に取り組む必要があるのだ。放っておけば、妻はつぶれてしまうかもしれないのだ。

■母親の心に寄り添い並走することで“父親”になる

 今の日本では育児・家事を母親だけで行うのはそもそも不可能である。なぜなら地域のコミュニケーションは希薄になり、安全・防犯意識は高まり、子どもを家でひとりになどできない。さらに情報量が増え、子どもには最善のケアをするべきという空気も高まりすぎている。全てが一世代前と違う中、多くの余裕のない母親たちは、ただただストレスに押しつぶされかかっている。

 僕たち夫側は、そう理解した上でどうするべきなのか。それは産後の家庭の大激変を、妻にひとりで背負わせないことだ。時間がない、できないことを社会環境のせいにせず、変化を“積極的に”受け入れて乗りこなす柔軟性をもたなくてはならない、と本書では書かれている。これができて初めて、僕たちは父親としてのスタートラインに立てるのではないだろうか。あなたの妻は生んだから母親になったのではない、ならざるを得ないからなっている。しかし僕たち夫は無自覚で、仕事に多くの時間を費やしたままである。

 私たちは母親に並走できて初めて父親になれる。“ふたりは同時に親になる”べきなのだ。

 なおここに書いたのは心得的なものにすぎない。本書は夫婦がもつべき新しい視点や、育児・家事の方法などを、何組かの夫婦を例にして示していることは付け加えておく。

 最後に偉そうなことを書いているお前はどうなんだ、と思われたかもしれない。正直言えば私も分かっていなかった夫のひとりだ。子どもが生まれて2年くらいの間、もっとかかわるべきだったと反省し、後悔している。ちゃんとした父親ではなかったかもしれない。皆さんはぜひ本書を読んで、悔いのない父親ライフを過ごしてほしい。それはたった数年のことなのだ。

文=古林恭