100年後、日本人は太陽系惑星に住み、テレパシーも使う?

社会

公開日:2018/10/8

『百年後の日本人』(苫米地英人/角川春樹事務所)

 2000年に米国の巨大ネット掲示板に突如現れ、その後に起こる世界的な出来事を次々と予言、的中させて世界を震撼させた人物がいた。2036年からやって来たという自称タイムトラベラー、ジョン・タイターだ。日本の未来に関しても、「2020年までには、日本はいくつかの共和国で構成された連邦国家になっている」と公表し、「マジかよ」とネット民をザワつかせた。

 現状で言えば、2020年までにそうなる可能性はなさそうだ。しかし2118年、つまり100年後なら、「現状のような日本、さらには米国や中国なども消滅している」と予言するのが、『百年後の日本人』(角川春樹事務所)の著者、認知科学者の苫米地英人氏だ。

 本書には、100年後の国際情勢、科学の進化とライフスタイル、新たな日本人像などがまとめられている。その中からいくつかのトピックスを箇条書きで紹介しよう。

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■100年後の日本と世界、主なトピックスの内容

1.日本は東京国、大阪国など、中国は北京国、上海国など、米国はニューヨーク国など、各国の主要都市が国家として独立する。そして東京国と北京国が連帯して1国を形成するなども起こりえる。

2.100年後にはワープ技術が実現している可能性も高く、新国家が拠点を築くのは地球に限らず、月や火星など居住可能な太陽系惑星への移住もあり得る。日本人が世界のリーダーになる可能性も高い。ただし、日本人という概念も変化している。

3.遺伝子操作技術とITの進化により、人類のIQは高まり、脳はデバイスとの連動で電脳化し、ネット情報はいつでも頭から引き出せるようになり、言葉によらないテレパシックなコミュニケーションさえ可能になる。

4.貧富の差により、地上世界に住む人たちと地下世界に住む人などのように、明確な分断化が起こる社会になっている。

5.進化したAIが多くの仕事をこなすため、ほとんどの「技術職」「士職」がなくなってしまう。変わらずに生き残り、かつ必要とされるのは人にしかできない「技能職」で、伝統の匠の技などがその典型である。

 本書には他にも、ペーパーレスになったデジタル通貨社会、フォースコンピュータの登場など、いろんな興味深い予言が記されている。

 いずれも現状からはちょっと想像できないような未来絵図だ。しかし著者によれば100年後の世界は、現在の国際情勢、政策、経済、科学の延長線上を考えれば見えてくるという。

■現在NASAが研究中のワープ技術が100年後には実用化!?

 たとえば、2の「ワープ技術の完成」の根拠として著者は、現在NASAが進めているワープエンジン開発のことに触れている。これは「空間を曲げる技術」であり、100年後であれば実用化されている可能性は決してゼロではない。

 こうした本書の読みどころのひとつは、いろんな未来絵図が楽しめることである。筆者などは、惑星コロニーはぜひ探訪したい。100年後と言わず、なんとか10年後にでも行けないだろうかとさえ思う。

 また、本書の予言にはすべてその「根拠となる事象」が示されていて、それが本書のもうひとつの読みどころとなっている。

 著者が明かす「根拠」とはすなわち、今の日本や世界で起こっている現状だ。そしてこのリアルな現状こそ、著者が本書を通して多くの読者に伝えたいテーマなのかもしれない。

■カジノも「種子法」廃止も海外の多国籍企業に貢ぐ政策!?

 たとえば、現在の日本は、強引にカジノをオープンすることに決め、これまでコメなどの種を国が守ってきた「種子法」が今年消滅した。著者はこれらの例を挙げながら、「どちらも日本の利益のためではなく、海外投資家や多国籍企業に貢ぐための政策である」という主旨の指摘をしている。

 こうした日本の現状は、100年後の日本、国際情勢と無関係ではない。つまり、100年後の未来をより良いものにしたいのなら、今からその下地を作る必要があるし、そうした意識をより多くの人が持って、今の政治や政策、科学技術、生き方やライフスタイルを作る必要があるということだ。

 さてあなたは本書に描かれるさまざまな絵図から、どんな未来が気になるだろうか? そして未来のために今をどう、より良くしようと思うだろうか? 「100年後なんて自分は関係ない」で済ませてしまうだろうか? 日本と世界の今、そして未来を考えたいという方は、ぜひ、本書を手に取ってみてほしい。

文=町田光