『ちはやふる』の作者による、チョコレート専門店で起こる珠玉のオムニバス物語

公開日:2012/3/29

クーベルチュール (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:末次由紀 価格:432円

※最新の価格はストアでご確認ください。

イケメン兄弟が経営するオシャレなチョコレート専門店「クーベルチュール」に訪れる人々が、チョコレートによって傷を癒されたり悩みを解決してもらったりする小話が4粒詰まった、珠玉の短篇集コミック。

作者は『ちはやふる』の末次由紀。現在はまだ1巻のみの刊行です。巻末「おまけ」の4コマ漫画では『ちはやふる』の面々もちらっと出てきてコラボしてくれます。「今から長編の『ちはやふる』を追いかけるのはちょっとハードルが高いな…」などという人に、末次由紀ワールドの入門書としてオススメしたい1冊です。

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●第1話「冬味」…仕事に燃える28歳の女性(趣味=食べ歩き)が、10年来の付き合いの元サークル仲間(男子)との距離を近づけようとするが…

●第2話「春味」…バレンタインデーに勇気を持てなかった15歳の少女が、ホワイトデーで思い切ってアタックをかけようとするが…

●第3話「夏味」…元・地元の駄菓子屋経営で65歳の女性が「クーベルチュール」にアルバイトにやってくるが、自分の風体と店の雰囲気とのギャップにコンプレックスを抱いている

●第4話「秋味」…野球チームに所属する9歳の男の子が、好きな女性コーチの別れに際して「クーベルチュール」を訪れる

作者ならではの、繊細な心情描写やキャラクターの描きわけに、1話からどっぷり感情移入をさせられます。どの話にも泣けたのですが、特に「秋味」が好みでした。唯一男の子が主人公なだけに、共感する部分が多く、小学校のときに憧れていた女の先生のことを思い出したり。「クーベルチュール」のイケメン兄弟はあくまで裏方に徹しており、読み進めるうちに好感度がうなぎのぼり。こんなあたたかいお店が近場にあったら、通ってみたくなるかも。

チョコレート・ココア製品の業界団体「日本チョコレート・ココア協会」によると、チョコレートの甘い香りには集中力や注意力、記憶力など精神活動を高める効果があったり、成分がストレスへの抵抗力を高めたりするとのこと。

チョコの甘い香りが漂い、舌に味まで広がってくるような甘くて美味しい本作で癒されてみてください。


第1話「冬味」より。イケメン兄弟、一郎・二郎には目もくれない。彼女の趣味は食べ歩き

第2話「春味」のワンシーン。チョコは「テンパリング」という艶出し作業をすることで、キラキラ輝くようになるという

第3話「夏味」で、おばさんがコンプレックスを振り払って客にチョコを出すシーン。チョコもおばさんもキラキラ美しい

第4話「秋味」。男の子が憧れのコーチのために、「クーベルチュール」でなにやら交渉をするが… (C)末次由紀/講談社