食事を変えれば、人生も変わる! 加工食品と外食の罠にはまらない、究極の料理術

食・料理

2018/10/14

『勝間式 食事ハック』(勝間和代/宝島社)

「料理は手間ヒマをかけた方がおいしくなるのは分かっている。けれど、そんなヒマがないので、いつもコンビニやスーパーの出来合いの惣菜で済ませている」という人は少なくないだろう。ところが、手間をかけなくてもちゃんとおいしくて、しかも健康的な食事をする方法がある。あるツールを使えば。そんな夢のような方法を解説するのは『勝間式 食事ハック』(勝間和代/宝島社)である。

 勝間和代といえば、仕事術に関する著作も多い経済評論家だ。そんな勝間氏が料理の本?との印象を持つ人もいるかもしれない。本書は食事に関する本だが、これまでの著作と同様にしっかりと効率化の考え方が反映されている。象徴的なのは冒頭の次の一文だろう。

食事を整えるということは、食事の生産性を上げるだけではなく人生の生産性を上げることにつながります

 食事の生産性を上げるために必要なもの、それは調理家電だ。実は家電好きとしても知られる勝間氏は、国内外のありとあらゆる調理家電を調達し、鍋とフライパンとガスのマニュアル調理から電気とセンサーによる自動調理への移行を検討してきたという。調理家電を駆使した結果、今ではベジタリアンカフェやヴィーガンレストランで出てきそうなレベルの料理が1食15分前後の準備時間で可能になっているらしい。

 これまでライフハックというと、IT機器の使い方やさまざまな文房具をどうするかという話がメインになってきた。あるいは、ガジェットと呼ばれる小さな機械や人間関係の整理方法のコツを伝えるものが多い。ところが、著者は食事こそライフハックに最も重要だと考えている。

 本書で衝撃だったのは「加工食品は貧困ビジネス」というくだりである。いわく、加工食品はタバコやアルコール、消費者金融の仕組みとまったく同じだという。行動経済学では借金の多さと太っている人の間には相関関係がある。加工食品が体に良くないことはみんな分かっていることだ。けれども、今、この瞬間だけを考えれば自分で料理をするよりも加工食品の方が確実に安くて早い。しかも、加工食品は短期的に見れば誰も損しない仕組みになっている。食材を提供している生産者も大量にはけて助かるし、消費者は安くてそこそこおいしいものが手に入り、加工食品会社は儲かるからだ。

 しかし、長期的に見ればその割を食うのは消費者である私たちである。特に、忙しくて自炊する余裕がない調理弱者はその影響が大きい。世の中にはさまざまな貧困問題があるが、金銭の問題だけでなく「調理貧困」の問題も存在している。それを解決する手段として有効なのが調理家電なのだ。

 本書が他の類書と異なるユニークな点は、食や健康といったテクノロジーと対極にあると思われる分野に、最大限テクノロジーを活用するという考え方が入っていることだ。食材の調達はネット通販で、調理は家電に任せれば時間と手間を大幅に削減できる。これだけテクノロジーが私たちの生活を変えているのに、なぜ料理はいまだに鍋とフライパンを使い、人が火加減を調節するマニュアル調理をしているのか。

 そうはいっても鍋やフライパンを使った方がおいしいと信じている人もいるだろう。なぜなら、調理家電を使うのはなんとなく手抜きをしているようにも思えるし、これまでの自分たちのやり方や努力を否定することになってしまうからだ。

 残念なことに、従来の調理法でおいしい料理を作れるまでの手間と時間をかけられる人は今や一部の人に限られている。手作りほどばらつきの大きいものはない。調理家電を手に入れるにはそれなりの費用がかかるが、結局安くつく。経済効果だけでなく、おいしさと健康を同時に成立させるという考え方に著者のオリジナリティを感じる。著者は、自宅では食事に気をつけていても社交のための外食は楽しむということなので、バランス感覚がある点も好印象。本書を読むと、今まで興味がなかった人でさえ調理家電の購入を検討したくなるだろう。

文=いづつえり