犯罪や暴力を繰り返す少年たち…『ギャングース』のもとになった“貧困男子の生きる道”

社会

2018/10/13

『ギャングース・ファイル 家のない少年たち』(鈴木大介/講談社)

 日本は先進国であり、24時間いつでも物が手に入る。コンビニエンスストアも至る所にあるため、一見豊かな国であるかのように見える。しかし、その裏には社会や親に棄てられ、生き延びるために犯罪を行わなければならない子どもも存在している。

 貧困による犯罪というと真っ先に思い浮かぶのが売春だが、少年の場合はそれでは生活していくのが難しい。そのため、路上に放り出された少年たちはオレオレ詐欺や架空請求などの特殊詐欺犯罪に手を染めて生きている場合もある。

 そんな貧困男子にスポットを当て、彼らの知られざる素顔に迫ったのが『ギャングース・ファイル 家のない少年たち』(鈴木大介/講談社)というルポルタージュだ。本書は2018年11月に実写映画化が決定されている人気漫画『ギャングース』(肥谷圭介:漫画、鈴木大介:ストーリー共同制作/講談社)の原案である。

 著者である鈴木氏は2008年に、帰れる家を失い、生きるために売春という道を選んだ少女の生き様を記した『家のない少女たち』(宝島社)を上梓したルポライター。取材を通し、劣悪な家庭環境から逃れた少女たちの人生や残酷な現代の闇を知った鈴木氏は「家のない少年たちはどうやって生活しているのか」という読者の声に応えるべく、本書を執筆した。

 ストリート生活をし、犯罪に手を染めながら生きている少年たちは極悪非道な不良に見えるかもしれない。しかし、少年たちと接し続けた鈴木氏は自分が思い描いていた不良少年像とはまったく違う彼らの素顔を目の当たりにしてきた。

僕が見た不良の素顔とは、泣き腫らした少年の顔だった。手の甲で涙をぬぐって、天を睨みあげる眼光だった。彼らは暴力的で、でも臆病で、自堕落なくせにものすごく勤勉で、そして何より生きるのに必死な人々だった。

 もちろん、生きるためであれ、犯罪に手を染めることはいけない。だが、親から十分に生きていく術を教えてもらえないまま棄てられた少年たちは被害者でもある。そして、被害者であった少年たちが加害者となってしまう裏には、私たちが知らない闇が潜んでいる。

 少年たちはなぜ犯罪者となってしまい、何を考え、何のために生きているのか。そんなことを考えさせてくれる本書には、言葉にできなかった少年たちの心の声がたくさん溢れている。

■酒の飲めないホストが見つけた居場所は「ヤクザの世界」

 本書にはさまざまな事情から、裏の世界で生きていかなければならなかった少年たちのエピソードが取り上げられている。その中でも特に筆者の心に残ったのが、酒の飲めない長身ホスト・ヒサの話だ。190cmで頭を三分刈りし、眉毛を全剃りしているヒサは、まさに私たちが思い描く不良少年の見本のような出で立ちをしている。しかし、彼には発達障害があり、母子家庭で自分を育てあげてくれた母親に迷惑をかけたくなかったため、上京してホストになった。

 ヒサは酒が飲めないホスト。発達障害の特性ゆえか、見かけによらず細かいことが気になり、他のホストと喧嘩になることもあった。そして、あげくの果てには中学生ぐらいで形成された「チームヨッシー」の闇討ちを受け、店をクビになったのだ。

 しかし、このクビの裏にはヒサなりの優しさが隠されていた。ヒサは喧嘩が強く、一度スイッチが入りキレると、敵も味方も見境なく殴るが、実はこの襲撃を受けたときには反撃をしなかった。

「だって見たっけ本当に中坊の集まりで調子くれてるけど、俺が本気でタタいたら可哀想じゃないですか。相手ガキなのに、あんなの一撃でクチャクチャだもんで。タタいたら大人げないですよ」

 このときヒサは耳たぶが半分とれかけて縫い合わせるほどの怪我をしたのにだ。

 こうしたヒサの一面を知ると、彼は不良とはまた違った存在なのではないかと思う読者もいるだろうが、現在ヒサが身を置いているのはヤクザの世界だ。ヤクザになったヒサはその後、かねてから付き合っていた彼女が働いていた風俗を辞めさせて、籍を入れたのだという。

 人は表裏一体であるが、それは不良の世界にも言えることなのかもしれない。どんなに荒ぶっている少年たちにも孤独を感じる瞬間や大切な存在はいて、自分やかけがえのない人を守っていくために、彼らは不良として命を懸けながら生きているようにも思える。被害者となり加害者として生きている不良たちには、“非行少年”という一言では片づけられない素顔があるのだ。

文=古川諭香