大企業の機密情報を開示。東芝パソコン部隊売却のウラ側は…

ビジネス

2018/10/19

『コンフィデンシャル あの会社の真実』(日本経済新聞社:編/日本経済新聞出版社)

「コンフィデンシャル(confidential)」という英単語を辞書で引くと、「機密の」「内密の」「他言無用の」「マル秘の」、さらには、「秘密書類」「親展」という意味が出てくる。つまりは、部外者には見せない、あるいは見られたくない文書を総じて「コンフィデンシャル」と呼ぶ。

『コンフィデンシャル あの会社の真実』(日本経済新聞社:編/日本経済新聞出版社)は、有料ニュースサイト「日経電子版」で最近公開された「コンフィデンシャル」の中から特に人気の高かったものをまとめた1冊。大企業の裏側を物語る「機密」にまで踏み込んで徹底取材し、それを読者に「親展」として届けるかたちだ。

■東芝の花形事業、パソコン部隊売却の裏側

 シャープへ売却されることが決定した東芝のパソコン部隊。世界初のノートパソコン「ダイナブック」を発表し、ノートパソコン市場で世界首位を独走していた、まさにかつての東芝の花形事業。今になってみると、売却額はたったの40億円だ。

 売却先のシャープは、東芝からみれば5年前までは格下の存在だった。本書では、そんなシャープに合流する東芝社員の心境や今後を心配する声が紹介されている。

 2013年6月、まだ東芝が電機分野で唯一の優良企業だった頃に田中久雄氏が新社長に就任した。あるシャープ幹部は、「田中氏は社長になってから変わってしまった。東芝の社風と、社長帝王学がこうさせたのではないか」と語ったそうだ。このほかにも本書には、田中氏とシャープ幹部との間で交わされたという生々しいやり取りも収録されている。

■三井三菱をも食らう、謎の造船一族

 造船シェアで国内首位、世界でも4位の今治造船(愛媛県今治市)は、非上場のオーナー企業ゆえその実態はあまり知られていない。そんな謎多きトップメーカーが、業界再編成に動き出したのだという。トヨタ自動車の次に鉄を買い、ライバルの三井・三菱グループもなびく。そんな造船集団を牽引するオーナー、檜垣家の素顔に本書は迫る。

 今治造船に在籍する檜垣一族は、3世代にわたる20人弱。一族内での不和を避けるための努力が本書からはうかがい知れる。愛媛県と言えば、大王製紙の井川家が有名なオーナー一族として檜垣家と並ぶ。元社長が子会社から巨額のカネを借り入れ、カジノに費やして問題となったことは、記憶に新しい。

 だが今治の地元住民は、「同じ愛媛でも両家の家風はまったく違う」と口をそろえる。社長は飛行機では必ずエコノミーシートに座り、都内の移動も電車が中心。一大勢力といわれながら控えめで結束の強い家風が、会社を安定させているようだ。

 今年、造船業界は再編の機運が高まっている。今治造船が上場企業と組む機会が増えれば、財務情報の開示を求める声が高まるかもしれない、と本書。新しい時代に対応しながら成長を続けられるか。檜垣一族の底力が、今試されているのだという。

 本書には上で少し触れた「カジノ事件」についてもその裏側が明かされている。また他にも、楽天ケータイ、セブン&アイ、ヤフー再生、トヨタが頼るAIなどなど、興味深いトピックが深堀されている。企業の真の姿を追い求め、「機密」にアクセスすることも厭わない「日経電子版」ならではの厚みのある記事が多く、読者への「親展」と言われるのも納得の内容だ。

 いつものニュースにもう少し深みが欲しい人、表層的なニュースには出てこないリアルな情報がほしいと願う人に勧めたい1冊だ。

文=K(稲)