お試し交際の行く末は? 読むとニヤニヤが止まらない『先輩、かわいいですね』

マンガ

更新日:2018/10/22

『先輩、かわいいですね』(三咲ユウ/白泉社)

 史上最強の愛情表現は「かわいい」だと思う。美人は3日で飽きるというけれど、それはたぶん表面上の美にしか注目していない場合だ。一挙一動がツボに入り、いわゆる“萌え”状態に入ったとき、人は恋心を愛情に変えるのではないだろうか。……なんて知ったような口をきいてはみたが、要するに猫が愛されるのと同じ原理。小憎たらしかろうが、粗相しようが、そこに愛嬌を感じることができれば「なにこの子かわいー!」と最終的にはメロメロになってしまうもの。

 そんな深い愛を感じられるマンガが『先輩、かわいいですね』(三咲ユウ/白泉社)。先輩とは文武両道、女子に優しい学園のアイドル・葉山怜のことで、つまりは男性だ。常日頃から「かっこいい」と騒がれることが活力の彼は、「かわいい」とは無縁のパーフェクトなイケメン男子。だが後輩の地味系女子・静子に告白されてから事態は変わる。

「交際を前提に友達から始めてほしい」という彼女は、これまでのどの女子とも違って恥じらう様子は欠片も見せず、「先輩、今日もかわいいですね……」と触ってくる。しかも「過去に女が何百人いようがどうでもいいです。私が最後の女になれればそれで」と言い放つ男前っぷり。ペースを狂わされた怜は、「絶対かっこいいって言わせてやる!」とお試しでお付き合いすることを決めるのだが。

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 ここまで読んでおわかりだろうが、完全に少女マンガのヒロインメンタルである。「絶対かわいいって言わせてやるんだから!」と拳をにぎる女子はさまざまなマンガで見かけてきたが、逆なので斬新だ。しかも怜、完璧な自分を維持し続けるために、夜中はこっそり誰にも見つからないようにランニング(陰ながら努力するのは真のイケメンらしくないから)。女子から差し入れのマフィンをもらえばもちろん捨てずに食べるけれど、そのぶん1時間ランニングを追加するという涙ぐましい努力っぷり。

 これほど努力を重ねるようになったのは、子供の頃苦手な体育で失敗して、彼の人気をやっかんだ男子に「かわいい~」とからかわれたからなのだが、以来彼にとって「かわいい」は侮辱。それなのに静子は、どんなにキメ顔を見せてもスマートにエスコートしてみせても「かわいい」としか言ってくれない。

 ありのままを受け入れてほしいけど、ダサい自分は知られたくない。それは健全な10代の思考だ。けれどどんな自分もまるごと愛でてくれる人がいたら、それはやっぱり最高だ。そして怜もまた、静子のクールな表情に隠された弱みを見つけるたびに、どんどん彼女に惹かれていく。官能小説好きという変わった趣味も、何事にも動じないよう育った強がりも、甘えるのが苦手な性格もすべて魅力に思えてくる。正直言って先輩だけでなく、このカップルがかわいすぎていつまででも眺めていたくなってしまう。読んでいてニヤニヤが止まらないマンガなのである。

文=立花もも