プロのサッカー選手になるにはどうすればいい? 小学生のためのサッカー“お受験”BOOK

出産・子育て

公開日:2018/10/23

『中学サッカー進路ナビ』(サカママ編集部:編/ソル・メディア)

「子どもに将来サッカー選手になりたい!と言われているのだけど相談にのってもらえないか?」小学校高学年の子どもがいる友人からこんな連絡がきた。調べてみたところ本書、『中学サッカー進路ナビ』(サカママ編集部:編/ソル・メディア)に行き当たった。

 友人が困るはずで、中学生年代のサッカーの情報は少なく、書籍はもとよりサイトなどでも体系的な情報入手が難しいようなのだ。ここでは本書をもとに、今の中学生年代のサッカーについて解説していく。

■中学生サッカーの現状

『中学サッカー進路ナビ』は3つの章から構成されている。中学生年代のサッカーの現状についての「ガイダンス」パート。名波浩氏(元日本代表・ジュビロ磐田監督)の「インタビュー」。そしてクラブチームの「情報ガイド」パートだ。

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 本書によると、現在の日本の中学生年代のサッカー事情は大きく変化している。それは何かと言えば働き方改革が進み、中学校教員による部活動顧問の業務状況が問題視されるようになっているそうなのだ。つまりナイター設備のある中学校でも、昔のような長時間の練習は難しい状況だ。週末の試合を含めて7日間休みなし、などというサッカー部はないのかもしれない。

 そんな時代に子どもたちは、中学校のサッカー部と、それ以外のクラブチームを選ぶことになる。東京都を例にすると、2016年のチーム数の内訳は中学校のサッカー部が310。Jリーグクラブアカデミー(下部組織)を含むクラブチームが100。サッカー部が多いものの、クラブチームには元プロ選手や指導ライセンスを持ったコーチがいる。本書にも書かれているが、この年代はクラブチーム優位の傾向にあると言えるだろう。「高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権」というサッカー部とクラブチームが真の中学生年代日本一を競う大会がある。ただ近年ではサッカー部が苦戦している。大会に出場できたのは、2015年は全32チーム中で1校。2016年は3校。2017年も1校のみなのだ。(ちなみに25年間クラブチームが優勝し続けている。)

 友人の子どもは、小学校のサッカー部でかなり上手い方だという。これからさらにレベルを高めて、サッカー選手を目指すのであれば、やはりクラブチームへ入るべきだと思う。

■クラブチームへ入るための情報

 クラブチームによってはセレクション(入団試験)がある。特にJリーグクラブアカデミーは、才能さえあればプロへの近道になるので大変な倍率になる。まさにサッカーの“お受験”だ。しかしテストで点を取れれば合格できる中学受験よりも厳しいかもしれない。技術と身体能力、そして才能を、セレクション当日にアピールできなければならないからだ。

 ただ親子ともに考えてほしいのは、プロの下部組織以外のクラブチームでも、ハイレベルなところは多いということ。そこから全国レベルの高校や、Jクラブリーグクラブアカデミーのユース(U-18)へ進む子どもたちがいるのだ。本書のクラブ情報パートは、セレクション情報など以下のようなデータを網羅している。

〈各クラブの主な情報〉
・セレクション情報(日程、募集人員数)
・年間費用(入会金、年会費、月会費、ユニフォーム代、遠征・合宿費用など)
・高校/ユース(U-18)へ入った実績
・監督とコーチのサッカー歴、指導歴、指導ライセンス
・連絡先、練習場の場所
・チームの強さの目安となる、所属リーグ戦のカテゴリー
・テスト休みの有無

■子どもに本気で努力させてあげてほしい

 本書の情報量はサッカーママ、パパには間違いなく役立つだろう。惜しむらくは掲載クラブが「東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県のみ」であることだ。他地域版も出してほしいし、ぜひ毎年情報を更新して刊行してほしい。たとえば全国のクラブ情報を網羅するポータルサイトなどがあると便利なのではないだろうか。

 冒頭の友人は、子どもが本気でやることは良いことだと言う。ただサッカーをやりたいなら勉強もしろと話している。そしてサッカーを続けるなら大学まで行ってほしいとも考えているようだ。中学生のサッカーの進路は保護者なしでは決まらない。送迎や栄養面のサポートや勉強の時間管理なども親が行う必要がある。言うなれば親子が二人三脚でプレーしているようなものだ。

 最後に、今サッカーをしている息子のいる名波氏のインタビューから引用する。

小学校高学年、中学生、高校生までそれだけ突っ込んでサッカーを続ければ、いったん離れてしまっても、その時の良い思い出、悪い思い出は、絶対にその後の人生の糧になります。

 プレーする子どももサポートする親も、ぜひ本気でサッカーを楽しんでほしい。

文=古林恭