ワークライフバランスよりワークアズライフで幸せに働く

ビジネス

公開日:2018/10/25

『世界のトップリーダーに学ぶ 一流の「偏愛」力』(谷本有香/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「“好き”を見つけて自分自身の“偏愛性”として高めていくことこそ、より楽しく、より自分らしく、成功に近づく働き方」と提唱するのが本書『世界のトップリーダーに学ぶ 一流の「偏愛」力』(谷本有香/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ 。Forbes JAPAN副編集長で経済ジャーナリストの著者谷本有香氏はキャスター時代を通して3000人を超える世界のトップリーダーたちを取材し、彼等もごく「普通の人間」であること、しかし成功者の共通項として、仕事にしようとまで熱中する「偏愛性」で社会との接点を作っていることを見出した。著者はこれを「偏愛力」としてその成功のメカニズムを解き明かす。

■「偏愛」が他者貢献を果たし「共感」を生む

「偏愛」をベースにする働き方とは、いうまでもなく「仕事を楽しむ」ということだ。そこに仲間たちが集まり、高いレベルの仕事が行われ、そして生み出される新たな価値が他者貢献を果たし「共感」を生む。ひとりの「偏愛」が他者貢献につながる時、それはビジネスの駆動力になり、また、その人自身をリーダーへと押し上げていくのだという。

■ビジネス・アイデンティティという資産

 著者はこの「熱中するほど好きなこと(偏愛)で他者貢献できるもの(共感)」を「ビジネス・アイデンティティ」として、AIに代替不可能なこれからのビジネスの核になるものだという。生産性や効率を核とするビジネスはAIやロボティクスが代替していってしまうからだ。さらに著者は「ビジネス・アイデンティティ」にこそ「信頼」が集まる「信頼資本主義社会」時代の到来さえ予測する。「ビジネス・アイデンティティ」は著作や商標、ノウハウと同様に人と金を集める重要な無形資産と捉えるべきだというのだ。

advertisement

■わくわくする自分に出会う

 著者は「熱中するほど好きなことは誰の中にも必ず存在し、それに気付き、さらに拡大する習慣こそ重要」とし、ビジネス・アイデンティティを持つリーダーたちに共通する3つの習慣「新しい体験をする」、「SFや禅など創造ライフを取り入れる」、「人に会う・コミュニティに参加する」を紹介している。それらは新しい体験や考えに触れ、自分のやりたいことや方向性を明確にしていこうとする習慣だ。本能に逆らわず行動し、わくわくする自分と出会うことが重要なのだと著者は述べる。

■一生幸せに働く生き方「ライフ・アイデンティティ」

 成功者たちの働き方は「ワーク・ライフバランス」というよりは仕事とプライベートの境があいまいで全てを楽しもうとする、いわば「ワークアズライフ」だという。そしてこれこそ「ビジネス・アイデンティティ」がさらに発展し、会社や社会接点の有無などにも左右されない個人の究極的な幸せの形「ライフ・アイデンティティ」へ通じるのだという。

 著者は「他の人以上に好きなことを見つける作業とは、他の人と自分の違いを見つける作業」という。すぐに見つからずとも感性みがきから取り組んでみようではないか。AI時代とはもっと自分に素直に生きることを後押しする社会でもあるようだ。

文=八田智明