今のうちに知っておきたい! バーテンダーが教えるジンの飲み方

食・料理

公開日:2018/10/26

『世界と日本のジンを知る事典』(荒井成次郎:監修/ナツメ社)

 ジントニック、ジンフィズ、マティーニやギムレットなど「ジン」といえばカクテルのベースとして多く使われるスピリッツ(蒸留酒)。ジンそのものを単体で楽しむことは少ない…。そう考える人は多いだろう。だが、そのイメージは、いま大きく変わろうとしているそうだ。その原動力が「クラフトジン」の登場だ。では、クラフトジンとは、いったいどんな酒なのだろう? そんなことを知りたいときに役立つ1冊が『世界と日本のジンを知る事典』(荒井成次郎:監修/ナツメ社)だ。

■味わいが異なるクラフトジンの個性を丁寧に紹介

 ジンは、穀物や糖蜜などを原料とするベーススピリッツに、ハーブや果皮、スパイスなどのボタニカルを数種類加えて風味づけし、蒸留させてできるスピリッツ。ジュニパーベリーと呼ばれる実はジンに必須のものとされ、味わいを決める大きな要素だ。

 クラフトジンの定義は明確にはないが、従来からのスタンダードなジンと比較すると、製法や風味づけによりこだわったスピリッツで、少量生産であることが多い。とくにこだわる部分はボタニカルで、ジュニパーベリーのほかに珍しいスパイスや産地ならではのハーブや果皮などが使われていることが多い。このこだわりが、銘柄ごとにまったく味わいの異なるというクラフトジンの特徴を生み出している。

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 本書では監修を務める荒井氏が、イギリス(イングランド&スコットランド)、フランス、スペイン、アメリカ、日本など全18カ国、61銘柄のクラフトジンをテイスティング。それぞれのクラフトジンが、どんな味わいなのか、風味の特徴を中心に、誕生のエピソードや蒸留所の特徴などをわかりやすく解説してくれる。また、自らホテルバーテンダーであり、数々のコンペティションでの受賞歴もある氏が、飲んで感じた特徴や印象にくわえ、おすすめの飲み方や楽しみ方まで提案してくれるのも役に立つ。それぞれのジンの持ち味や、自分の好みに合いそうなジンを知るのに役立つだろう。

 たとえば、クラフトジンのパイオニア的銘柄と称される「ヘンドリックスジン」の解説は以下のとおりだ。

 テイスティングメモを見てみよう。

──バラのフローラルが特徴的です。ボタニカルのひとつであるキュウリをスライスして入れるだけで、味わいがマイルドになります──

 作り手が自分たちの1本に強くこだわった結果、銘柄ごとにまったく違う風味や味わいを持つというクラフトジンの特徴が、荒井氏の言葉によって目に見えるように浮き立ってくる。これからクラフトジンの世界に踏み込もうとする方にとって、これらの言葉はおおいに参考になるはずだ。

■ジンを使ったカクテルや、ぴったりのおつまみの情報も満載

 本書の中心となるクラフトジンの紹介、10銘柄のジンを「押さえておくべきスタンダード」として解説。ボンベイやタンカレーなど馴染みのある銘柄のジンが、どんな歴史を持っているのかを知ることもできる。また、ジンを使ったカクテルのレシピや、ジンにぴったり合う小粋なおつまみも紹介されているので、お酒の楽しみ方はぐんと大きく広がっていくはずだ。

 アルコールを嗜む人であっても、実はよくわからないことが多いジンの特徴。本書は、いま静かなブームとして盛り上がりつつあるクラフトジンの世界に踏み込むための第一歩として最適だ。元からのジン好きはもちろんのこと、これからジンやカクテルについて知ってみたいという人にも手にとってもらいたい。

文=井上淳