待ってました! 『おっさんずラブ』田中圭&吉田鋼太郎のシナリオブック。あの感動再び!

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公開日:2018/10/27

『おっさんずラブ シナリオブック』(徳尾浩司/一迅社)

 女性を中心に多くの人を虜にしてやまない『おっさんずラブ』(2018年4~6月テレビ朝日土曜ナイトドラマで放映)。今もなお、Twitterやネットでのインタビュー記事などSNSを中心に熱い思いが綴られ続け、主人公の春田創一(田中圭)を愛してやまない部長、黒澤武蔵(吉田鋼太郎)のInstagram「武蔵の部屋」のフォロワーは44万人を超えている。

 また、10月15日付オリコン週間DVDランキングで『おっさんずラブDVD-BOX』が2.2万枚を売り上げて2位、ジャンル別ドラマ部門では1位を獲得した、今、この原稿を書いているカフェでも女性たちの会話から「おっさんずラブ」という言葉が聞こえてきて、やはり話題作であると実感をする。

 そして、ついに『おっさんずラブ シナリオブック』(一迅社)が発売された。

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 舞台の演出家でもある徳尾浩司氏が描くテンポの良い群像劇は絶妙だ。主人公の春田はごく普通のサラリーマンで愛されキャラ。そんな彼が33歳にして男性からモテまくるという設定のこのドラマは、同性に恋することを特別なこととして描写せず、男女関係ない純粋な愛が描かれる。

 役者陣の小気味よい芝居に笑わない人はいないだろう。ただ、笑わせるだけではないのだ。好きな人ができたとき、些細なことで嬉しくなったり、悲しくなったりする人間たちが愛おしくなる。日常の中に入り交じる浮き立つ気持ち、やるせない気持ちを抱えて愛する人の幸せを願う人間たち。一途でひたむきに人を愛する登場人物たちの言動に、視聴者は心を動かされたのだろう。登場人物全員がまっすぐに人を好きで、いいことを言っているのだ。

 シナリオを読むと、人を好きになることに涙を流したり、やきもきしたり、あの感動を再び噛みしめさせてくれる。そして、人の心に熱く響いてくる台詞がちりばめられていることに気づく。ドラマを観ていない人も、シナリオを読んだことのない人も徳尾氏の描く人物たちにきっと引き込まれるはず。

春田のナレーション「神様。人を愛するとは、一体どういう事なのでしょうか」

 同僚の牧凌太は、春田と付き合うことになったのだが、同性同士で付き合うことに戸惑いを隠せない春田の幸せを願って別れを選んだ。それから、春田に一度は振られた黒澤部長が公私にわたって春田に愛を注ぎ、結婚式の日を迎える。

 牧師の前に立つ春田と黒澤。

 あの、キュンとするラスト。シナリオブックを読んで、ピュアなハートに触れられることは間違いない。人を愛することに悩んだり、立ち止まったりしている人たちの心をわしづかみにするドラマだ。ぜひ、シナリオでも味わってほしい。

文=色川尚