「こんなに働いたのに…」と給与に不満を言う人は、数字を正しく読めていないかも

ビジネス

公開日:2018/10/30

『「数字」が読めると年収がアップするって本当ですか?』(古屋悟司:著、田中靖浩:監修/日本実業出版社)

 毎月の給与明細を見て「オレの手取り少ねーな」とか「わたしの仕事量ならもっとお給料をもらっていいはずなのに」と不満に思っている方も少なくないだろう。また、年1回の昇給で「あんなに実績を残しているのにたった○○円しか上がっていない!」と感じることもあるはずだ。だがそれは、ご自身が勤めている会社の給与体系をしっかり把握していないことにも原因があるそうだ。

 本稿では『「数字」が読めると年収がアップするって本当ですか?』(古屋悟司:著、田中靖浩:監修/日本実業出版社)の内容に沿って、会社の給料制や歩合制の仕組みについて触れていきたい。

 本稿で紹介する書籍は、給料制の営業マン、歩合制の営業マン、そして自営業、と転職を複数回した著者がその歩みのなかで気づいたことを、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」風に近い過去に戻るという“物語構成”で軽快に語っていくものだ。各ページの下部に記載された“未来の”著者からのコメントもおもしろい。

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■「数字」の意味が分かると世界観が変わる

 会社に勤める多くの若手社員は、身近なところでいうと自身の給与明細書に書かれている「数字」から、大きなところでは決算書に書かれている「数字」の意味を知らないがゆえに、給料の少なさに嘆き、不満を抱いていると思われる(ただ、そのことを鑑みても一般的な会社の初任給は安すぎる、とわたしは思ってしまうのだが)。

 社員として働くにせよ、経営するにせよ、ひとつの民間企業にかかわるものは、給与明細書や自社の決算書に書かれた数字の読み方をきちんと知り、会社の経営体質を把握しなければ、給与など自身のお金にかかわる事柄について注文を付けることは難しいのではないだろうか。

 逆に、「数字」の読み方をきちんと体得しているのであれば、自分の給料に注文を付けるべき時期やいま勤めている会社を見限って転職・起業に踏み切るタイミングが、おのずと見えてくるともいえる。はたまた、お金にふり回されるのではなく、お金と適切な距離感で向き合うようになることができるかもしれない。

■給料制社員・歩合制社員にそれぞれ必要な心構え

 まず、給料制の社員について言えること。それは自分の努力や成績を自身で過大評価している可能性もあるということだ。「オレはこんなに頑張って働き、いい営業成績も残しているのに…」と思っていたらそれは危険だ。なぜかと問われれば、それはあなたがひとりで会社全体を背負っているわけではないことが自覚できていないからだと答えられよう。給料の低さを嘆く前に、会社組織の中には、成績のふるわない社員や直接的には利益を生み出さないが確実に会社に貢献しているほかの部署もあることを思い出してほしい。

 そして、歩合制社員について。この業務形態で働くには、「頑張っても、なかなか売れない」ということを肝に銘じておく必要がある。歩合制の業務形態で取引する商品には「ブランド力」が備わっていない場合もある。つまり、広告費にお金をかける代わりに、営業マンが成し遂げた結果に対してお金を振り分けているのだ。また、歩合制の会社であっても、給料制の会社と同様に直接的には利益を生み出さない部署(たとえば総務や経理などの管理部門)とその社員もいるわけだから、そこへ配分するお金のことも頭の片隅に置いておかなくてはいけないだろう。

 本稿では敢えて引き締まった文体で、書籍『「数字」が読めると年収がアップするって本当ですか?』を紹介させてもらった。それは、“「数字」が読める=年収アップ”という安易で短絡的な論理が存在しているわけではないということをわかってほしかったからだ。本書の読後には、“「数字」が読める→業務における改善点や推進点を把握できる→会社全体の業績アップに貢献する→年収がアップする”という筋道が隠れていることがすぐにわかるに違いない。そしてまた、お金そのものに固執するのでなく、社員でも経営者としてでも、「自分はどのようにお金を稼いでいきたいのか」という根本的な問いを目の当たりにするかもしれない。

文=ムラカミ ハヤト