強制お見合い、3人断れば“テロ撲滅隊”行き!? ドラマ『結婚相手は抽選で』

文芸・カルチャー

2018/11/2

『結婚相手は抽選で』
垣谷美雨/双葉文庫)

「抽選見合い結婚法が、来年四月一日より施行されることが決まった」──野村周平さん主演でドラマ化されている話題の小説、『結婚相手は抽選で』(垣谷美雨/双葉文庫)は、そんな衝撃的な一文ではじまる。しかも、その法律が制定された目的は、「少子化の最大原因とされる晩婚化を打開する」ためだというので、読み手は物語のリアリティーに引き込まれてしまう。

「抽選見合い結婚法」の概要はこうだ。

対象は、二十五歳から三十五歳までの男女で、前科や離婚歴がなく、子供のいない独身者である。抽選方法は、本人の年齢プラスマイナス五歳の範囲内で無作為とされている。
相手が気に入らなければ、二人までは断わることができる。しかし、どうしても気に入らずに三人目も断わった場合は、テロ対策活動後方支援隊(通称テロ撲滅隊)に二年間従事しなければならない。

 自分も対象だ、とギクリとした読者もいることだろう。作中でも、数人の未婚男女が、当人の意志や状況に関係なくお見合いに臨むことになる。

 たとえば、田舎に住む看護師の好美。酒を飲むと暴力を振るう父を亡くして以来、母一人子一人、支え合って暮らしてきた。結婚を考えたこともあるのだが、自分にべったりの母がいては話がまとまるはずもない。好美もすでに31歳、田舎では行き遅れと言われる年齢だ。特別きれいなほうでもないし、結婚はあきらめようと思っていたのだが、閉鎖的な田舎を出たい、ひとときでも母から解放されたい、やっぱり結婚だってしたい。見合い相手の抽選は地域ごとに行われると聞いた好美は、このチャンスを逃してなるものかと、渋る母を言いくるめ、単身上京するのだが──。

 好美のほかにも、この法律の対象年齢前後の人ならば、よりグサグサと胸に刺さる生き様の男女が登場する。仕事は単純作業のみ、けれど買い物と海外旅行はやめられず、母離れもできない30歳女子。彼女いない歴=年齢、モテないことで自信を失い、劣等感をこじらせている27歳オタク男子。もちろん、抽選なんかで見合いをさせられてはたまらないと恋人との結婚に踏み切る者もいる。早々に三人の見合い相手を断って、テロ撲滅隊に入る者もいる。美人に善人、彼氏気取りに地味女、お金持ちのお坊ちゃんに肥満体……それぞれの人物に、それぞれの事情があり、譲れないものがある。

「じゃあ、人は何のために結婚するの?」
尋ねたあとすぐに、我ながら子供っぽい質問だと思ったが、本当に結婚の意味がわからなくなってきていた。

 混乱の末、登場人物が投げかける問いに、あなたは答えを返せるだろうか。結婚なんて他人事、そう言い切れる人はおそらく少ない。それだけに、質問の答えは読み手の数だけあるだろう。国がセッティングする強制的な出会いによって、人々は何を得て、何を手放すのか? コミカルに転がる物語を追ううちに、これから結婚する人も、すでに結婚した人も、結婚はしない人も、できない人も、あらためて自分の価値観を発見するに違いない。

文=三田ゆき