理不尽な要求で損しないために! ひろゆき流“論破力”で自分を守る

ビジネス

2018/11/2

『論破力』(ひろゆき/朝日新聞出版)

 子供のころ、自分のわがままな要求を親に認めさせるために、自分なりに“論理”という武器で戦っていた。議題は、お小遣いのアップ、スマホの購入、予備校をサボる許可…など、今考えれば些細なことなのだが、当時は本気で勝ち取りたかったものばかりだ。

 大人になってからも、議論の場は案外たくさんある。会社での上司とのやり取りや、家族会議、あるいは友人との雑談…。こうした場面でうまく自分の主張を言葉にできず、結果的にいつも損してしまう人はいるはずだ。筆者も、その場でうまくやり込められてしまい、「ああ言えば勝てたのに…」と後悔することがある。

 職場や家庭でそんなイライラを抱えている人たちは、本書『論破力』(ひろゆき/朝日新聞出版)を読んでほしい。著者は、匿名掲示板「2ちゃんねる」の開設や、「ニコニコ動画」の立ち上げで知られるひろゆき(西村博之)氏。討論番組やツイッターでの彼の物言いはとてもフラットで、ネット上では「論破王」と呼ばれているほど。本書では、そんなひろゆき氏が数々の“論破テクニック”を教えてくれる。

■議論には、“ジャッジ”が必要

 著者がまず語るのは、“ジャッジ”の必要性だ。議論というと1対1の言葉の応酬をイメージするが、実はそれだけでは議論は決着しないのだという。少し考えてみれば当たり前のことなのだが、最終的に議論の勝敗を決めるのは第三者だ。たとえば、子供と父親が議論していたら、母親が“ジャッジ”する必要があるし、会社の会議なら決定権を持つ立場の人間を説得しなくてはならない。

 すなわち、議論をする上で必要なのは、それを見聞きしている“周りの人たち”を説得しようという意識だ。このことを踏まえ、著者は、“論破力”の正体を「説得力のある話し方」だと語る。

■「権威ある似たもの」でプッシュする

 本書で紹介されているテクニックのうち、筆者がもっとも「うまい」と感じたのが “「権威ある似たもの」でプッシュする”という手法だ。著者は、ニコニコ動画のよさをプレゼンする際、「シルク・ドゥ・ソレイユ」にたとえて話したのだという。シルク・ドゥ・ソレイユは、舞台の至るところでパフォーマンスが行われているため、観客は何度も観て全てを楽しみたくなる。一方、ニコニコ動画にも動画とコメントがあり、1度では全てを楽しむことができない。その結果、視聴者はなんとなく繰り返し見てしまい、再生回数が伸びやすくなる…。著者はこのように説明し、最後に「ね、シルク・ドゥ・ソレイユと同じでしょ?」という調子で締めくくる。すると、いつの間にか、シルク・ドゥ・ソレイユを否定せずして、ニコニコ動画を否定しにくくなっているというわけだ。

 紙幅の関係で紹介しきれないのが惜しいが、他にも「非論理的に見える人の取り扱い法」「無理ゲーな話を実現させるギャンブル話法」「テクニックとしてのウソ」など、気になるトピックが目白押しだ。“論破力”を高めたい人にはもってこいの本書だが、最後に気を付けてほしい点がひとつだけ。それは“目的を間違えないこと”。論破力はいろいろな場面で応用可能な力だが、夫婦喧嘩で相手を完全論破しても仕方がないのだ(笑)

文=中川 凌