きっかけは妻子をストーカーに殺されたこと――変態ストーカー専門の“私人警察”が繰り広げる、衝撃的アクションマンガ

マンガ・アニメ

2018/11/10

『私人警察』(小川亮/講談社)

 刑事訴訟法213条には、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と定められている。これはつまり、現行犯なら一般人でも逮捕することが認められている「私人逮捕」というものだ。(※実際に私人逮捕を行うにはいくつかの条件を満たす必要がある)

 小川亮のマンガ『私人警察』(講談社)は、この私人逮捕を利用し、変態ストーカーの現行犯逮捕を生業としている元警察官・麻木蓮二(あさぎれんじ)の物語である。

 本書の主人公・麻木は、妻子をストーカーに殺された経験から、警察官を辞職し、ストーカー逮捕のみを目的に生きるようになった男。

 彼のもとには、ストーカー被害に遭う美女たちが次々に駆け込んで来る。

 彼女たちは皆、命の危険を感じているにもかかわらず、様々な事情から警察に相手にされず、窮地に追い込まれていた。

 例えば、第1話で登場するのは、ライブアイドルをしている古都みはること「みはるん」。

 人気上昇中の彼女は、ストーカーに悩んでいた。警察に相談するが、「いっそアイドルやめたらどうですか?」と冷めた表情で対応される……。もちろん命の方が大事だが、やっとイベントに呼んでもらえるようになった彼女は、夢をあきらめることができなかった。

 警察からの帰り道、みはるは「ストーカー捕まえます」とでかでかと記された車を目撃する。その車の持ち主こそ、警察官を辞職し、復讐と“ある目的”のためにストーカーの私人逮捕を繰り返している麻木だった。みはるは麻木にストーカーを捕まえてほしいとお願いする。

 麻木が見守る中、みはるはステージに立つことに。だがライブが始まると、興奮した客が暴れ出し、会場の照明が消えるトラブルが発生する。

 みはるは照明が消えた瞬間、ストーカー男に車で連れ去られ、古屋のような場所へ監禁され、下着姿で天井から吊るされてしまう。

 そして驚くべきことに、みはるから奪った衣装は太ったストーカー男が着用し、

「こうするしかないんだ… 僕が「みはるん」になるには… 後は君がいなくなれば 誰も僕たちが入れ替わったって気づかないよ」

 と告げ、みはるを肉も骨も全部溶かすフッ化水素酸につけて殺害しようとするのだ。

 だが、そこで麻木が登場。“警察官”ではない彼は、容赦なくストーカー男を痛めつけ、驚くべき方法で「私人逮捕」を試みるのだが……!?

 本書に登場するストーカーたちは、外見も中身も、目を覆いたくなる異常者ばかりだ。麻木は、外国人部隊の傭兵に切りつけられることもあれば、義姉を襲う連続殺人犯と対峙することもある。また、法で裁けない悪人を次々と排除する「処刑人」ともぶつかり合い、死闘を繰り広げる。

 ラストまでノンストップでストーカーを追い詰める強面の麻木がとてつもなく格好良いのはもちろんのこと、意外な黒幕の正体や、元ストーカーで今は麻木のサポートをしながら猫カフェ店長をするカオルなど、全ての登場人物が非常にエキセントリックで変人だったのが印象深い。

 ストーカー事件の報道が絶えない昨今、麻木のような存在が本当にいてくれると心強いのだが、大怪我を繰り返し、心臓が止まっても尚、悪に挑み続けようとする向こう見ずな彼は心配でもある。型破りの男が繰り広げる、衝撃的なアクションマンガだ。ぜひこの興奮をあなたにも味わってほしい。

文=さゆ