羽生結弦選手のメンタルの強さは、「首尾一貫感覚」の高さにあった!?

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公開日:2018/11/8

『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(舟木彩乃/小学館)

 大きなチャンスを逃した主人公。しかし、彼は負けなかった。「こんなこともあると思っていたよ。大丈夫、なんとかなる。きっと、この失敗にも大きな意味があるはずさ」。こう自分を納得させると、すぐさま新たな挑戦の日々を開始した──。

 こんなセリフと共に主人公が逆境に耐える姿を、なにかの映画、小説、マンガなどで、一度は目にしていませんか?

 じつはこの冒頭のセリフ、ストレス・マネジメントの専門家たちが注目する、ストレス対処力である「首尾一貫感覚」というものの高さを示す、魔法のフレーズなのだそう。

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 つまり、このセリフに秘められた意味を徹底的に理解して、自分のものとしてしまえば、あらゆるストレスや人生の困難にもしなやかに対処できる、「逆境に強い人」になれるというわけです。

 そんなことを教えてくれるのが、『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(舟木彩乃/小学館)です。

羽生結弦選手の名言に秘められた「首尾一貫感覚」の高さ

 ストレス・マネジメント研究者、カウンセラーである著者によると「首尾一貫感覚」の首尾一貫とは「いま目の前にあることだけでなく、過去や未来、自分以外の周辺世界をより広く俯瞰した場合に、全体として整っている状態を意味します」とのこと。

 わかりやすく言えば、いま嫌な現実があっても、やがて結果オーライ(なるべくハッピーエンドを迎える)ことがわかっているよ、といった感覚です。

 その一例として著者は、フィギュアスケートの羽生結弦選手が公式練習中に中国選手とぶつかってケガをした際に発した、こんな言葉を紹介しています。

「逆境は嫌いじゃない。それを乗り越えた先にはいい景色があると信じている」。

 そして著者は、「不幸な出来事でも、自分が成長するチャンスとして捉え、アクシデントを意味があることに変えている」と解説します。これが「首尾一貫感覚」の高さであり、逆境を超えて、さらなる成長へとつながるエッセンスだというわけです。

■「首尾一貫感覚」を構成する3つの基本感覚とは?

 ではここで、魔法のフレーズ「こんなこともあると思っていたよ。大丈夫、なんとかなる。きっと、この失敗にも大きな意味があるはずさ」をもう一度、取り上げておきましょう。著者によれば、「首尾一貫感覚」は基本となる3つの感覚で構成されているそうです。

 その1つ目が「把握可能感」です。これはセリフの「こんなこともあると思っていたよ」にあたる部分です。日々に起こることはおおよそ「想定の範囲内」であり、もし想定外のことが起こっても、自分はそれを把握できるという感覚です。

 2つ目が「処理可能感」で、「大丈夫、なんとかなる」にあたります。ストレスや困難に対して、自分や周辺を巻き込みながらなんとか乗り切れるという感覚です。

 3つ目が「有意味感」で、「きっと、この失敗にも大きな意味があるはずさ」の部分で、「自分の身に起こるどんなことにも意味がある」と思える感覚です。

 さて、皆さんは上記の中で1や2は共感できるでしょうが、3に関してはいかがでしょうか? どんな出来事、ハプニング、不幸にもなにか意味がある、そう思えるでしょうか? もし思えるなら「首尾一貫感覚」をどんどん研ぎ澄ますことができるでしょう。

 というのも著者は、「この『有意味感』こそ、首尾一貫感覚のベースであり、生きていくうえで最も重要な感覚だと思っています」と明かしているからです。

 一方、「有意味感なんて、自分にはちょっと無理かも」と思ってもあきらめないでくださいね。著者によれば「首尾一貫感覚は、先天的なものではなく、後天的に誰もが高められる感覚」なのだそうです。

 本書には、この「首尾一貫感覚」をどう高めればいいのか、そのメソッドがさまざまに紹介されています。その中にはドラクエ的成長術や「ドラえもん」ののび太の「処理可能感」なども登場します。また、著者が論文テーマとして調査した「議員秘書のストレス対処力」や、「コラム法」「自分日記」など、本格的に首尾一貫感覚を磨くためのエクササイズ法も学べます。

 誰にも備わっている感覚を磨くだけで、最強のメンタルの持ち主になれるという「首尾一貫感覚」。ストレスフルな時代を生きる私たちにとって、心強い味方になってくれるはずです。ぜひ、本書からそのエッセンスを学んでみてくださいね。

文=松本ひろ子