「佐藤健さんと高橋一生さんに終始悶えてました…」映画『億男』を原作で振り返る!

文芸・カルチャー

2018/11/11

『億男』(川村元気/文藝春秋)

 もしも宝くじで1億円が当たったらどうする? なんて会話を一度はしたことがあるだろう。佐藤健&高橋一生主演で公開中の映画『億男』はまさに3億を当てて夢を実現させた男が、「お金と幸せ」についての答えを追い求める物語。『ドラえもん のび太の宝島』や『君の名は。』を手掛けた東宝の名プロデューサー・川村元気が書き下ろした小説『億男』(単行本:マガジンハウス、文庫:文藝春秋)が原作となっていることでも話題を呼んでいる。

 公開2日間で興行収入は約1億2000万円、映画観客動員ランキング2位という好調なスタートを切った同作。公開から1か月たった今も、Twitter上では「お金って何だろうと考えられされる映画だった」「わかってるつもりだけど気づきがたくさん。これからもお金に振り回されないで、生きていきたい(笑)」「エンドロールで胸熱っ」と高評価。「佐藤健さんと高橋一生さんどちらも大好きだから2人が組んでくれるなんて幸せすぎて終始悶えてました…」と役者陣にも注目が集まっており、「高橋一生さんの落語の完成度が凄かった!!」「ただただ枯れ気味な佐藤健を堪能した」「超真面目な映画だったが、北村一輝率いる金持ちを演じた役者陣の奇演が最高に楽しい」と評判も上々だ。

 と、予告編や感想コメントを見るだけで、「3億円を当てた男がお金に振り回される話らしい」ということはわかるが、詳細が気になる方のためにここで改めて原作小説をご紹介しよう。

 昼は図書館司書、夜はパン工場で働き、妻子と別居し、寒々しい四畳半で暮らす主人公の一男。弟が3000万円の借金を残して失踪し、肩代わりしたせいで、あたたかな家庭は一瞬で砕け散った。幸福を取り戻すため無我夢中で働き続けていた彼が、偶然にも手にしたのが3億円の当たりくじ。だが、15年ぶりに会った親友・九十九がそのお金をもってこれまた失踪。行方を追うため、一男は九十九に関係する人たちを訪ねていく……というのがおおまかなあらすじ。巨万の富を手にしていたはずの九十九がなぜ? という謎を追う物語でもあるのだが、本書に多くの人が心打たれるのはやはり、冒頭にも書いた「お金と幸せ」について始終問いかけられているからだろう。

 本当の幸せはお金じゃ買えないとよくいうけれど、そんなのはお金のある人のセリフだと思う人が大半だろう。実際には物質的な豊かさと、精神的な豊かさ、そのどちらも人間には必要だ。しかし悲しいかな、大金がからむと、精神的な豊かさ――人と人との信頼関係がいともたやすく断ち切れてしまうのもよくある話。なぜか? お金の力を過信するからだ。正確には、幸せはお金「だけ」じゃ買えないのに、お金さえあれば人生がより豊かになると感じてしまう。一男もそう思った。「お金さえとりもどせば万事解決。家族も元通りになって、自分はまた幸せになれる」。けれどそんな彼に、お金に翻弄される人生を送ってきた九十九の友人・十和子は言う。「私はそうは思いません」「あなたは何を失ったのか、いまだにわかっていない」。そして実際、別居する妻は、お金をとりもどせたとしても、一男の元には戻らないという。

 九十九を追いながら一男は、「お金と幸せ」について考え続ける。自分の幸せはどこにあるのか。そのために必要なものは――自分がなくしてしまったものは何か。理由は何なのか。はたしてあなたはそれに気づけるだろうか。我が身に照らしながら、じっくり読んでいただきたい一冊だ。

文=立花もも