アイドル、若手俳優、同人誌…“沼”に落ち、“推し”のために浪費するオンナたち

マンガ

更新日:2018/11/19

『まんが浪費図鑑』(劇団雌猫:原案、朝陽 昇:まんが/小学館)

 よく「今の若者はモノを買わなくなった」なんて言われるが、自分が本当に好きなアイドルやキャラクター、いわゆる“推し”のためとなれば話は別だ。筆者も最近、ある声優のファンクラブに入り、いつも万単位でお金を使っている。全国ツアーが行われるとなれば格安の深夜バスで現地に向かい、「今回の物販は戦争になりそうだ」と聞けば朝4時に飛び起きて始発で並びに行く。全力でパフォーマンスをする彼女にファンとして全力で応えながら、たくさんのエネルギーをもらって家に帰る。あんなに輝いている彼女のファンとして、恥じない自分であらねば――そんなことを考えながら、今日もこの原稿を書いている(と言っても過言ではない)。

 さて、本稿で紹介する『まんが浪費図鑑』(劇団雌猫:原案、朝陽 昇:まんが/小学館)は、筆者と同様、“推し”にたくさんのお金をつぎ込む女性たちの生き様を記録した短編集である。それはハタから見れば“浪費”としか思えないのだが、当人たちにとっては紛れもない“愛”の形であり、生きるための支えになっているものだ。

 第2話「若手俳優で浪費する女」では、いわゆる“2.5次元(アニメやマンガを原作にした舞台)”の沼にズブズブとハマっていく女性の心理を描く。友人に連れられて舞台を観にきた彼女は、そこでひときわ輝くイケメン俳優に一目ぼれ。彼女は、その感動を彼に伝えるため、プレゼントとして服を贈る。すると後日、なんとその服を着た写真を彼がSNSにアップしていたのだ…! それから彼女はさらに彼にのめり込み、どんどん高級なプレゼントをするようになっていく…。

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 彼女の行動を「バカげている」「見返りがあるわけでもないのに」と批判するのは簡単だ。だが、「彼は何が欲しいだろう」「何が似合うだろう」――そんな風に彼のことを真剣に考えているとき、彼女の気持ちはこれ以上ないほどに高まっている。彼女の内側にあるその高揚を、誰が否定できるだろうか。本作では他にも、「同人誌で浪費する女」「占いで浪費する女」「フィギュアスケートで浪費する女」など、さまざまなコンテンツにのめり込む女たちが登場する。どんな“浪費”の裏にも、必ずそれに値する“感情”がある。「浪費する女」の自覚がある方々は「あるある」な目線で、彼女たちが理解できない人は、その実態を知るための「図鑑」として、それぞれ本作を楽しんでほしい。

文=中川 凌