そんなに夫の両親が嫌いなの!? “死後離婚”をえらぶ「嫁」たちの逆襲

恋愛・結婚

2018/11/15

■「役割」を受け入れてきた女性たちの逆襲

『死後離婚』という言葉が注目されています。配偶者の死後、結婚によってできた義理の両親や兄弟姉妹といった、いわゆる「姻族」との関係を断つことを指しています。

 具体的な手続きとしては、配偶者の死亡を証明する戸籍謄本などとあわせて、「姻族関係終了届」に必要事項を記載し、押印します。相手方の同意は必要なく、相手方への通知もされません。法務省の戸籍統計によると、同届の提出数は2015年度には2783件、2016年には4032件と増加しており、提出者の大半は女性だとされます。

 死後離婚という言葉は制度の名前ではなく、いわゆる造語です。夫の親族との関係を終了する意味合いをもちますが、この言葉自体には「夫と縁を切るような印象があり、違和感がある」との声もあります。

 ちなみに、戸籍を旧姓に戻したい場合の手続きは「復氏届」を提出します。

■「家に入る」という意識は希薄に…

 死後離婚の原因は、介護、遺産トラブル、不仲、お墓の問題など。このうち「介護」について注目すると、実際に息子の嫁が介護するケースは激減しており、1982年の43%から2011年には9%にまで減っているというデータがあります(「認知症の人と家族の会」による統計より)。

 死後離婚や嫁が介護するケースが減ってきた要因のひとつに、女性たちの「家に入る」という意識の希薄化が考えられます。戦前教育を受けた人やその子世代(70代~80代)の多くは、嫁は結婚相手の「家に入る」という意識があり、家業の手伝いや義両親との同居などを当たり前のように担ってきました。

 しかし、核家族化が進んだ現在では、共働き世帯が増え、女性が担う役割も多様になるなかで、かつての「嫁」としての役割を果たすことが難しくなってきています。死後離婚はいってみれば、これまで家における「役割」を嫌と言わずに受け入れてきた女性たちの「逆襲」だと表現したら、言い過ぎでしょうか。

■「婚姻関係終了届」は第二の人生の決意表明

 ここで興味深いデータを紹介します。株式会社オウチーノが20~39歳男女835名を対象に行った調査(2015年3月15日~3月17日)で「『長男だから家を継ぐ』『長女だから家を継ぐ』という考えについて、あなたはどう感じますか?」という質問をしたところ、「どちらかというと古い考えだと思う」と「古い考えだと思う」を合わせると約6割にのぼりました。

 死後離婚の要因のみならず、結婚しない人が増えている理由にも目を転じると、子供を家の「跡継ぎ」であるとか、老後生活の支えとして考える意識が低下し、その前提として結婚する必要性が低くなってきたという背景も考えられます。

■夫亡き後も続く、姑の暴言でうつ病に…

 そうはいっても、今の時代でもなお、自分の人生に立ちはだかる「家」の重圧に苦しんでいる人は少なくありません。

 40代の元介護福祉士の女性は、夫亡き後、姑の暴言の数々に傷つけられ、遂にはうつ病を患うほどに。「息子が早く死んだのは、あんたのせいだ」「介護の仕事をしているくせに、なにをやっていたのか!」。こうした姑からの言葉の暴力に彼女は苦しめられてきました。時が経ち、姑から詫びの言葉はあったものの、彼女は姑を許せず、さらに姑を許せずにいる自分を責め続けているのです。

 ある30代の女性は、一人娘で親から過剰といえるほどの愛情を受けて育ちました。3年前に付き合い始めた男性とは結婚を考えていますが、母親からは「婿養子に入れる人でないと結婚は承諾できない」と言われ、自分の本心とは裏腹に彼との別れを考えているといいます。

「家に入る」という意識が希薄化している現代は、多様な生き方を寛容する優しい時代なようでいて、厳しい時代であるといえるのかもしれません。YESかNOかを自分に問い、自分自身で答えを見出し、選んだ方向を歩き続ける意志が求められるからです。

 死後離婚について話を戻せば、「姻族関係終了届」を提出する手続きをしなくても、義理の親に対しては道徳上の扶養義務があるだけで介護の義務はありません。だとすれば、「姻族関係終了届」は、パートナーを失ってからの第二の人生に向けた自らの「決意表明」のようなものだと言えるのではないでしょうか。

■「家」という重圧に悩むアナタへ

 最後に、今現在「家」という重圧に悩んでいる人のヒントになりそうな言葉を記しておきます。女優の山口智子さんが某誌のインタビューで話していた内容です。

「私は『家』という宿命に縛られるのではなく、自分自身が後悔しない人生を自分で選び取りたいと、いつしか心の奥で強く願うようになりました。(中略)

YESかNOか、自分で選び取ることは、大人の嬉しい責任であり、大人ならではの特権。あれこれ悩む暇があったら、自分の心に耳を傾けて、着々と選択していけばいいんです。選び続けていれば、人生は前に進んでいく」。

文=citrus 介護ジャーナリスト 小山朝子