紀平梨花「北京で優勝したい」――羽生結弦、宇野昌磨選手に続く、新世代スケーター8人の本音

スポーツ・科学

公開日:2018/11/15

『Little Wings2019 次世代スケーター8人の「今」と「未来」』(Trace on ice編集部/双葉社)

 グランプリシリーズも始まり、いよいよ本格的なフィギュアスケートのシーズンが開幕した。つい目がいってしまうのは、羽生結弦選手や宇野昌磨選手など、名の知れたスケーターだろう。だがフィギュアスケートには、未成熟ながら、確実に「次世代」の才能も花開いている。

『Little Wings2019 次世代スケーター8人の「今」と「未来」』(Trace on ice編集部/双葉社)は、若手有望スケーター男女8名の、写真もいっぱいのインタビュー集だ。

 取り上げられているのは、全員20歳以下で、オリンピック出場経験のない日本人選手たち。男子は友野一希(敬称略。以下同じ)、須本光希、島田高志郎、山本草太。女子は本田真凜、山下真瑚、紀平梨花、横井ゆは菜。それぞれ成長期真っただ中の若い選手だが、滑るたびに進化をし続け、「次にどんな姿になっているか想像がつかない」という、才能に溢れた次世代スケーターだ。

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 私はフィギュアファンだと言いつつ、お恥ずかしながら彼らの人柄や演技を、ほとんど知らなかった。しかし本書を読み、それぞれの人となりや、目標、情熱、フィギュアスケートへの向き合い方が、大きく「違う」ことを知った。

 4年後の北京五輪出場を目標にはしているが、その「熱量」には「差」があったりする。「勝つこと」を優先事項にしている選手もいれば、そうではなく、芸術的な表現としてのフィギュアスケートを大切にしている選手もいる。

 女子の大技、トリプルアクセルを武器として持ち、シニアデビュー戦となったグランプリシリーズのNHK杯でいきなり優勝を果たした紀平梨花選手は、「北京オリンピックで優勝して、たくさんの方に恩返しをしたい。今の私は、スケートのことしか考えていないんです」と、北京五輪に焦点を絞り厳しい練習を重ねているそうだ。

 一方で、横井ゆは菜選手は「オリンピック、絶対行ってやるぞ! なんて気持ちはやっぱりなくて、『行けたらラッキー』なんて思ってる」「試合のときは、楽しんで演技することを心がけて、今も毎試合毎試合、楽しんでます」「(楽しみながらも)たくさんの成長を自分なりにしていればいいですね」と語っている。

 また、コーチや振付師に興味があるという島田高志郎選手は「(競技者としてメダルを獲れなくても)自分自身の表現を見せられたらいいのかもしれない」と「迷い」を吐露しており、反対に「世界のトップで戦っていきたい」と熱く語る友野一希選手もいる。

 また、大きな怪我を乗り越えて復帰した山本草太選手は、以前は「オリンピックに僕は出なきゃいけない!」と自分に言い聞かせる目的もあり、高い目標を公言していたそうだが、今は「まだまだ、そんなことを言える立場ではない」「急いで大きな目標を見るのではなく、目の前の一つひとつ、一日一日を大事にしていきます」と考え方を変えていたりする。

「勝利」や「順位」に重きを置く選手、「表現」や「自分らしさ」を大切にしている選手。どちらの方が「正しい」「正しくない」という話ではない。それに山本選手のように、若い彼らの「目標」は、何か印象的な経験によって変化することもあるだろう。ただ、フィギュアスケートへ真摯に向き合っている姿は清々しく、誰もが輝いているように感じた。

 ちなみに、友野選手、山本選手、本田選手、山下選手、紀平選手は「グランプリシリーズ2018」に出場しているので、ぜひテレビの前で応援してほしい。

 彼らはまだ「夢の途中」。これからどこまで羽ばたいていくのか、楽しみで仕方がない。

文=雨野裾