『ちょっと今から仕事やめてくる』著者最新作!「親友」の行方を追う感動の物語

文芸・カルチャー

公開日:2018/11/22

『星の降る家のローレン』(北川恵海/KADOKAWA)

 愛は期せずしてすれ違いを生む。なぜ私たちは、誰かのことを思えば思うほど、空回りしてしまうのだろう。だが、いくらすれ違ったとしても、本当に大切な相手ならば、決して手を離してはいけない。たとえ、手を離してしまったとしても、自らの手で引き寄せなければならない。

『星の降る家のローレン』は、2017年に映画化された『ちょっと今から仕事やめてくる』で知られる北川恵海氏の最新作。大切な「親友」を探す青年の物語は、『ちょっと今から仕事やめてくる』と同様、読めば晴れ晴れとした気分になって最後には思わずほろりと泣けてしまう。友情、愛情、家族愛…。きっとあなたにとって大切な誰かのことを思い出すに違いない。

 主人公は岡本宏助。彼には大切な「親友」がいる。それは、幼い頃、母親に捨てられた後に出会った、謎多き中年画家・ローレン。宏助はローレンのことを慕っていたが、やがて彼は宏助の前から姿を消し、生死不明となってしまっていた。だが、大学生になった宏助のもとに、ローレンから「自分の絵を売ってほしい」と手紙が来る。絵を売るためにローレンの絵の個展を開催した宏助だが、そこで聞いたのは、「ローレンは犯罪者」「人殺し」という噂だった。

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 真綿のようなふんわりとした優しい表情。少しかすれたガサガサした声。母親に捨てられた宏助にとってローレンは、自分がこの世界にいても良いのだと初めて教えてくれた存在だった。そんなあたたかい人が犯罪者のわけがない。叫び出したくなるほどの思いを胸に、宏助はローレンを探し始める。

 宏助の相棒となるのは、個展に来ていた客・雪子。彼女は、個展の際、ローレンの描いた「杏奈と雪子」の絵の前で涙を流していた人物だ。聞けば、この絵のモデルは自分と親友の「杏奈」なのだという。だが、ローレン同様、杏奈も消息は不明。杏奈の行方を掴む手がかりになるという確信から、宏助とともに、ローレン探しを手伝うこととなる。

「長い人生の中で、いくつかの運命は決まってる。でも、その運命を引き寄せるのは自分やと思うんよ。だから、努力するの。たくさん努力した上で、それが運命であったなら、神様が少しだけ協力してくれる。そう信じてるんよ」

 ローレンの過去には一体何があるのか。親の愛情を失った子ども、孤独な女子高生、子どものいない夫婦…。過去と現在がつながった時、宏助は…。それぞれの愛が心に迫る感動作は、『ちょっと今から仕事やめてくる』と同様、話題になること間違いなし。この優しい物語は、あなたの心を癒してくれるに違いない。

文=アサトーミナミ

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北川恵海公式サイト
http://mwbunko.com/special/sp10/