ピカソもフェルメールも若冲も! カリスマアートブロガーが教える鑑賞術

文芸・カルチャー

2018/11/19

『いちばんやさしい美術鑑賞』(青い日記帳/筑摩書房)

「美術展には行きたいけれど、何をどう見たらいいかわからない」という方は多いでしょう。『いちばんやさしい美術鑑賞』(青い日記帳/筑摩書房)は、そんな方にもピッタリな1冊です。著者は、年間300以上の美術展を鑑賞し、15年にわたり展覧会レビューや書評などのアートブログを書き続け、多くのメディアにコラムを寄稿しトークショーも行う、カリスマアートブロガーとして知られています。本書も、西洋美術、日本美術、現代美術、工芸などのジャンルから、日本国内で見ることができる作品を取り上げて、わかりやすく楽しくアート鑑賞の入り口を開いてくれます。

 西洋絵画を観に行ったとき、多くの人の前に立ちはだかるのが「歴史画」の壁。西洋絵画のほとんどが、日本人には馴染みの薄いギリシア神話や聖書をモチーフとした歴史画(神話画と宗教画)だからです。これを気軽に鑑賞するために、著者は絵のタイトルをスマホで検索することをすすめています。

 旧約聖書に綴られている場面は、同じ主題でいろいろな画家に描かれているので、その都度検索するうちに自分の知識として定着するのだそうです。本書で紹介されているバロック時代の画家・グエルチーノの「ゴリアテの首を持つダヴィデ」の背景を知ることで、ミケランジェロの「ダヴィデ像」についても鑑賞が深まるわけです。

「よい印象が残る作品はしっかり描かれている」と著者は述べます。しっかり描かれているかどうかを知るのには、人体の中で最も普遍性が高い「手」の描き方を見ること。どんな時代のどんなテーマの絵画でも一貫して画家の力量がわかるという「手」に注目したいですね。

 ピカソ作品は、綿密な絵画理論に基づいて描かれているので、理論で読み解くべきといいます。ピカソがいかにしてその表現方法に行きついたかも、ぜひ知っておきたいですね。本書では、ピカソをはじめとする20世紀絵画のおもしろさを十分に味わう見方も教えてくれます。

 日本画は、上から幾重にも重ねられる西洋絵画と違い、描き直しのきかない一発勝負の世界であり、緊張感や筆の走りが見どころの1つです。また鉱石や貴石など天然の顔料を使用するため、色を混ぜ合わせることをしない日本画は、何百年たっても、つややかさをキープしているのだそう。本書では、教科書でお馴染みの狩野派、尾形光琳、大ブームが続いている伊藤若冲の魅力の秘密を解き明かしています。その他見ておきたい茶碗や明治工芸についても解説し、鑑賞の入口を作ってくれます

 本書は、美術鑑賞の秘訣だけでなく、連綿とつながる奥深い美術の魅力を教えてくれます。また美術展を通して、知的好奇心が広がる幸せ、作家のゆかりの地を旅行する楽しみ、同時代のアーティストを応援する喜びなど、美術が人生をどれほど彩るものかを気付かせてくれる1冊です。

文=泉ゆりこ