「育てにくい子…」と感じたときどうする? 何度もわざとスプーンを落とす、泣き始めたら1時間……。

出産・子育て

2018/11/20

『「育てにくい子」と感じたときに読む本』(主婦の友社)

 子どものために努力していることはたくさんあるし、できる限り手をかけている。それなのに、子どもが手に負えなくなってしまったら…。

『「育てにくい子」と感じたときに読む本』(主婦の友社)は、児童精神科医で知られる故・佐々木正美さんが、親の悩み相談に答えながら、育児において大切なことを紹介している本。あたたかく、時に厳しい言葉は、子どもたちに深い愛情を向ける著者だからこそ。その対象は乳幼児から小学生までをカバーしていて、この本を読んだお母さんたちからは「楽になった」「これでいいんだと思えた」「涙があふれた」など、感謝の気持ちが数多く寄せられているそうです。

 筆者の2歳になったばかりの息子は「もっとお風呂で遊びたい!」とお風呂上がりに1時間も泣き続ける。子どもの気持ちがわからず、ホトホト困り果てており…。何か解決のヒントになることはないものかと、興味津々で読んでみました。

■変わるべきは「子」ではなく「親」

「『親が望むような子にしよう』と思うのではなく、『子どもが望むような親』に自分自身がなるといい」

 この言葉を読んでハッと我に返りました。そうすれば、子どもが同じわがままや問題を繰り返すことはなくなるのだと。
 考えてみれば、子どもに接するときの頭の中は「こんな子になってほしい」「しっかりとしつけを」ということばかり。子どものためだし、それをするのが「いい親」だと思っているからです。“子どもを変えよう”とすることに夢中で、“子どもの要求にあわせて自分が変わろう”なんて考えには及びませんでした。
 だから、子どもは満足できず、毎日のように同じことを繰り返していたのですね…。

 そして、「子どもが望むような親」になるためには、まずは子どもを観察し、何が望みなのかを考えることが大事だといいます。中には、“子どもを観察して気持ちを汲み取るなんて、できる気がしない…”という人もいるかもしれませんが、本書で紹介されている悩み事は、引っ込み思案の子や、兄弟で仲良くできない子など多岐にわたっているので、ヒントになるような答えがきっと見つかるはずです。

■なぜ、何度もわざとスプーンを落とすのか

 けれど、ふと思いました。そうはいっても、子どもの望む通りにしてきたこともあるはずだと。たとえば、食事のときに何度もわざとスプーンを落としたのを、その度に拾っていました。それでも子どもが、スプーンを落とすのをやめないのはなぜでしょうか。

「『今回だけよ』と言い含めたり、最初は笑顔でやってあげていてもしまいには『もういいかげんにしなさい』と怒ったり、そんなやり方では意味がありません」

 子どもは、親が“面倒だな…”と思いながらやっていることを、すべてお見通しだったのです。

 子どもはお母さんにしてほしいことがたくさんあって、それを満たせるまで要求するのだとか。そんなふうに自分を求めていたのか…と我が子の気持ちを考えると、急に愛おしくなってホロリと涙ぐんでしまいました。

■親にわがままを言える子は、むしろ「安心な子」

 では、「子どもの望むような親」になれたとして、それがどんな影響を与えてくれるのでしょうか。本書によると、自分の望む通りに手をかけられて育った子は、やがて自分は価値がある存在だと自覚し、それを経験したからこそ他者を愛せるようになり、いずれは親や相手の願いを叶えたいと考える思いやりのある子に育つといいます。成長してからの自立も驚くほど早いのだとか。

 親にわがままを言える子は、それだけ親を信頼しているという「安心な子」なのだ、という言葉が心に響きました。「手がかかること」は決して悪いことではないのです。

「手がかかる子や、要求の多い子は蘭や菊の花なんですよ。手をかければ見事な大輪の花を咲かせます」

 花にたとえると、大輪のほうが手間がかかるのと同じように、手のかかる子ほど将来が楽しみなのだそう。子どもは親に手をかけさせるのが当たり前なのだから、幼いうちに手がかかったほうが親はラク、という言葉にも勇気づけられます。

■子どもはそのままでいい。お母さんはもっとリラックスを

 著者は、子どもはそのままでいい、心配することなんて何もないのに、と語ります。それより心配なのはお母さんのほうだと。しつけに夢中になるうちに不安になり、リラックスできていないお母さんたち。著者は、お母さんの不安を取り除いてくれるヒントもたくさん紹介しています。「育てにくい」と感じていたことは、リラックスしていればわかるような、ちょっとした勘違いであることも多いのです。もしくは、発達障害などが考えられるケースも、本書では紹介しています。

 子どもの気持ちを観察し、その気持ちがわかったとき、子どものためにしてあげられることの多くは、本当に簡単な、些細なことばかり。たとえば、子どもに「かわいいね」と一言声をかける、子どもの好きなご飯を作ってあげる、といったことです。

 著者の言葉の一つ一つは深く心に響き、親の気持ち、そして子どもの気持ちを深く理解してくれていることがしっかりと感じられます。すべての子どもたちに幸せになってほしい、という気持ちが伝わってくるようで、読みながらあたたかい安心感に包まれました。親である自分が子どもに安心感と信頼感を与えることで、子どもの未来は切り開かれていくのだろうと、そう確信できる一冊です。

文=吉田有希