ついに東京進出! 1本800円、大ブーム「乃が美」の“生”食パン誕生秘話

暮らし

2018/11/20

『奇跡のパン 日本中で行列ができる「乃が美」を生んだ「超・逆転思考」』(阪上雄司/KADOKAWA)

 2013年に大阪で創業。以来、人気が人気を呼び、5年間で日本全国に店舗を広げてきた「高級『生』食パン専門店 乃が美」。これまで、東京に店舗がないことで「東京だけが知らないパン」としても話題を集めてきた。その「乃が美」が2018年11月15日、とうとう港区・麻布十番に東京初の店舗をオープンした。食べた人を幸せにする「生」食パンは、どのように誕生したのか。

■「生」食パンの「生」の意味とは?

 創業から5年が経つ今も、SNSで連日「一番好きな食パン」「やっと食べられた!」「本当に柔らかい」などの声が後を絶たない「乃が美」の「生」食パン。1本800円もする食パンが1日5万本以上売れるというから驚きだ。いったいどんな食パンなのか。

「乃が美」の「生」食パンは、いわゆる食パンの概念を打ち破る革新的なパン。焼いてあるのに「生」と銘打っているのは、生チョコレートや生キャラメルと同じく、とろけるような食感をもっているからだという。

 このパンは、耳だけ残されることがない。食パンの「いらない」部分、「カタい」に決まっているはずの耳まで柔らかい。耳の部分こそが柔らかい。これが、最大の特徴である。普通の食パンと同じく直方体の形状をしているが、手で上から押さえればぺしゃんこに潰せるほどの柔らかさ。

 店頭でもスライスはしない。ナイフを入れれば潰れてしまうし、店でナイフを入れるまでもなく、指でちぎることができるからだ。軽く引っ張るだけで、しっとりとふくよかな生地が層状に、破れるように分かれる。断面からは、かすかに甘い香りが立ち昇る。

 口に含むと、生地はほのかな甘みとコクを口中に広げながらとろける。焼かずに食べてもおいしい。何もつけなくてもおいしい。もう一口、もう一口、と、またパンをちぎりたくなる…。

 文字で読むだけでもお腹が空いてくるパンだが、この食パンは、阪上氏が大阪プロレスの代表として老人ホームの慰問に訪れていたときに着想を得たのだという。

■2年間かけてたどりついた理想の味

 大阪プロレスには、定期的に「老人ホームを慰問する」という仕事がある。施設で暮らすお年寄りは、大阪プロレスの笑いあふれるパフォーマンスをとても楽しみにしていらっしゃる。そこで、もっと楽しんでいただけるようなことをしたいと思った阪上氏は、ある日、職員さんに聞いてみた。

「お年寄りの方って、ほかにどんなことを楽しいと思われるんでしょうね?」。すると、「食べること」だと職員さんは教えてくれた。笑うことと食べること、これが人生の喜びの二本柱なのだ、と。

 そこで、皆さんの朝の食卓を眺めてみると、あちこちの皿の上で大量の食パンの耳が残っていた。「歯が悪くて、柔らかいもんしか食べられへんからねえ」と、気の毒そうに職員さんがいう。そうか、そうやなぁ、と阪上氏は思った。

 思えば、食パンというのは日本の食生活、とくに大切な朝食を支える主食であるにもかかわらず、食べづらさがついて回る食べ物だった。学校の給食に出てくるあの四角いパンも、多くの人は牛乳とともに飲み下していたはずだ。

 それなら、と阪上氏は考えた。子どもからお年寄りまで、誰もが残さず食べられる、柔らかくて美味しい食パンを作れたらどうだろうか、と。そんな食パンをもし実現できれば、日本中の人に喜んでもらえるかもしれない…。

 そこから2年。パンの知識ゼロの門外漢だった阪上氏と、志を共にした仲間たちの挑戦は実を結び、今や日本中で行列ができる食パン専門店が誕生した。気の遠くなるような挑戦の過程は、ぜひ書籍『奇跡のパン 日本中で行列ができる「乃が美」を生んだ「超・逆転思考」』(KADOKAWA)を読んでみてほしい。

【著者プロフィール】
阪上雄司(さかがみ・ゆうじ)
1968年、兵庫県生まれ。高校卒業後、(株)ダイエー入社。飲食部門の責任者を務め、26歳で飲食店を開業。20年間にわたりさまざまな飲食店を経営。2007年、大阪プロレス代表取締役会長に就任。2013年、高級『生』食パン専門店「乃が美」を創業。5年で全国展開し、1日5万本以上売れるパンに育て上げる。