「世の中バカばっかり!」…って、あなたもその一人かも。“バカの人”と向き合うには?

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公開日:2018/11/22

『「バカの人」相手に感情的にならない本』(和田秀樹/文芸社)

『「バカの人」相手に感情的にならない本』(和田秀樹/文芸社)――。このタイトルを目にした瞬間、自分の周りのバカな人たちの顔がこれでもかと頭をよぎった。世の中、バカばっかり! 困るんだよなあ。よし、この本を読んで、感情的にならない方法を学ぼうじゃあないか。しかし読み進めて、気づいた。(バカはわたしだ……)。

 バカにも様々な種類がある。わたしがイメージしていたバカは、本書によると「決めつけバカ」。原因帰属を非情に単純化しがちな人のことだ。彼らは何かしらの結果があったときに、理由を決めつけで単純に片付けてしまう。わたしの元上司がこのタイプで、一度ミスをしたら「またどうせミスをするからお前にはやらさない」と言われ、二度ミスをしたら「やっぱりミスをしたじゃないか!」と怒鳴られ、内心、(1000000回ダメでも、1000001回目はなにか変わるかもしれないのに!)とドリカム的な発想で憤っていたものだ。まあ、ミスをするわたしが悪いとも言えるが、とにかく彼は上司として尊敬はできなかった。

 決めつけが激しい人の大きな欠点は、柔軟性に欠けるところにあると著者は言う。決めつけバカの多くはいわゆる性格が単純な人。その単純な性格ゆえに、ガンガンと知識を頭のなかに放り込んで、難しい受験に受かってしまう人もいる。事業で実績をあげる人もいる。しかし、うまくいかなくなったときに、他の可能性が考えられないと、決めつけ型の人はドカンと落ち込んでしまうことになるという。

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「決めつけ」は、ある意味で「躁鬱」に似ています。自分がうまくいっているときは「躁」状態になりやすく、実力以上の力を発揮したりもするのですが、これがうまくいかなくなると、極度に落ち込み、なかなか立ち直れない人も出てきます。「ダメじゃないかもしれない」とは思えないのです。決めつけが激しければ激しいほど、へこんだときに立ち直りにくくなってしまいます。

 ここで、ハッとした。(まさに、わたしじゃん……)。無自覚だったが、そう言えば柔軟性に欠けるし、一旦ダメになると、取り返しがつかずにダメになってしまう。この世の終わりかというくらい落ち込んで、立ち直るのに相当な時間がかかってしまう。そう気づいて、これまたどっと落ち込んでしまった。

 しかし先を読み進めると、決めつけバカを治す方法が書かれていた。「柔軟な思考力をつけるために、仕事の場面で将来予測をシミュレーションしてみるとよいでしょう」――。例えば、このまま売り上げが落ちていけば、うちの会社はつぶれる、と仮定するとする。そのときに、「いや、ここでこうやってコストを削減すれば生き残れるかもしれない」とか、「ここの部分では売り上げに期待できそうだ」というように、いくつもの可能性についてシミュレーションする習慣をつけていく。そうすることによって、多角的にものを見ることができるようになり、柔軟な発想が引き出せるようになっていくというのだ。よし、これからは常に柔軟な思考を心掛けよう。そうすれば、わたしのバカは直るかもしれない。

 著者はあとがきにこう書いている。

「バカ」を治すために意外と大切な要素は「素直さ」です。「おまえ、これにあてはまってるぞ」と他人から言われて、そこで素直に聞ければ100倍の見込みがあります。あるいは本書を読んで「自分もあてはまっていそうだ」と素直に思える人であれば、かなりの可能性で将来的な成長の見込みがあります。

 本書には決めつけバカの他、「性格バカ」「実直バカ」「うのみバカ」「はだかのバカ」「ふぬけバカ」「井戸のなかのバカ」「大風呂敷バカ」の傾向と対策が書かれている。バカの人に振り回されがちな人、(自分はバカかも……?)と思い当たる節のある人は必読の一冊だ。

文=水野シンパシー