フェイクニュース、デマ、ヘイト…ネットに蔓延する「情報汚染」を見抜けますか?

社会

公開日:2018/11/24

『情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー』(津田大介/朝日新聞出版)

「ネットの“市井の意見”は本当に世論か、それとも“業者”によって巧みに作られたものか——?」ネットと切っても切れないのが、情報操作だ。あなたが信じていた情報は、儲けのために流されたフェイクニュースかもしれない。

 ネットにはびこる汚染された情報にまどわされず、情報を読み解く力(メディアリテラシー)を付けていくために読んでほしいのが『情報戦争を生き抜く 武器としてのメディアリテラシー』(津田大介/朝日新聞出版)だ。本書は、ジャーナリストでありメディア・アクティビストの津田大介氏が、ネットでの情報汚染という現代特有の問題に斬り込む1冊だ。

 著者によれば、ネットの情報を汚染させている勢力は次の4種類に分けられるという。

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1.義憤に燃えた確信犯
 これは、「“敵”と思うものに自ら社会的制裁を与えたい」という人たちを指す。政治的な目的を達成するために、積極的にネット炎上に加担する。2016年のある調査によると過去1年間で炎上に参加した人はネット利用者全体の0.5%程度であった。

2.世論工作業者
「ネット風評監視サービス」を提供する業者が、依頼企業の風評や流出情報を24時間体制で監視する。ネガティブな投稿を行った人物の特定に加え、「中傷を打ち消して、誤解を解く情報を拡散する」ことを行う。これが悪用されると世論工作的な効果を持つだろう。

3.ビジネス目的のネットメディア
「まとめサイト」や「トレンドブログ」などの多くの匿名ネットメディアがこれに当てはまる。ある調査によれば、ネットに投稿される政治・社会関連のほとんどが次の3種類に分類されるという。
(a)韓国、中国に対する憤り(嫌韓・嫌中意識)
(b)「弱者利権」(立場の弱さを利用して権利を主張、獲得する)認識に基づく、マイノリティへの違和感
(c)マスコミに対する批判

 これら3パターンのどれかに合致する記事は、ネットでアクセスを集めやすい。それを利用してネット広告で荒稼ぎするユーザーたちが存在する。

4.中間層・善意の拡散者
 1〜3で歪められた情報を真に受けて、リツイートやシェアなどの拡散を行う一般層は、これまで紹介した勢力の中で最も人数が多いために、決定的に「ネット世論」を形成してしまうという。

 では、これらの勢力にはどういう対策ができるだろうか。フェイクニュースやポスト真実(客観的な事実より、感情的な訴えかけが重視され世論形成されること)への対抗策として著者が示すのは次の4つだ。

1.「技術」で解決する
 AI技術の活用したり外部の報道機関と連携し、ニュースのファクトチェックをソーシャルメディアの機能として組み込む。

2.「経済制裁」で解決する
「問題のあるサイトに自社の広告が掲載される」という、企業にとってのデメリットを回避するために、フェイクニュースやヘイトスピーチを流すサイトから広告を剥がす。また、問題のある発信者に新規アカウントを開設できないようにするなどして、彼らの収入を絶つ。

3.発信者情報開示請求の改善で解決する
 フェイクニュースやヘイトスピーチを流す発信者に、情報発信にともなう責任を取らせる。現在はまだ、法的措置を行うハードルは非常に高いため、行政による議論が求められる。

4.「報道」で解決する
 フェイクニュースが溢れるこの時代、報道の持つ根本的な力が試されている。国を問わず選挙期間中にはデマが拡散されることもある。そこでマスメディアが積極的にファクトチェックを行い、紙面やウェブで間違いを指摘する。

 これらの解決策は、すべて“対症療法”でしかないと著者は言う。彼はこう続ける。「しかし、だからといって問題を放置していいということにはならない。どの対策も“やらないよりかはマシ”なのだから、全て粛々と進めるべきだ」。

 いまや、ソーシャルメディアの影響力は計り知れない。事実を見抜くのが困難なこともある。汚染された情報がはびこる「情報戦争」を生き抜くために、本書が必ず役に立つだろう。

文=ジョセート