忘れ物や遅刻…ADHDの私でも大丈夫! 家事を上手くこなす「段取り力」を解説

出産・子育て

更新日:2018/11/27

『「大人のADHD」のための段取り力』(司馬理英子:監修/講談社)

 近年は社会で「発達障害」という言葉が浸透しつつあり、テレビ番組でもたびたび特集として取り上げられるまでになってきた。しかし、当事者は「どうして周りと同じようにできないのだろう…」と、ひとりで苦しんでいることが、まだまだ多いように感じる。

 中でも、発達障害のひとつに分類される注意欠如・多動性障害(ADHD)の方は、日常的な家事が上手くこなせないことも多く、自己嫌悪に陥ってしまいやすいとされている。そんなADHDの人の苦しみにわかりやすく具体的な解決策を与えてくれるのが『「大人のADHD」のための段取り力』(司馬理英子:監修/講談社)である。

 一般的な家事は“できて当たり前”だと思われやすいため、ADHDの人は「どうして私にはできないのだろう…」と悲観的な気持ちになってしまいやすい。だが、自分に見合った目標を立てながら「段取り力」を身に付けていけば、今の辛い状況を好転させられるかもしれない。本稿では、「段取り力」の付け方を具体的にご紹介していこう。

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■「5つの課題」を意識して家事上手に。そのステップは?

 ADHDの人はその特性により、やるべきことの順番を決めたり時間通りにこなしたりすることが苦手だといわれている。これを改善するために、視野を広く長くもち、道筋をつける「段取り力」を身に付けていこう。

 そのためには「5つの課題」を意識しながら結果を先に考え、点と点を繋ぐように道筋をつけていこう。

【5つの課題】
(1)「時間の管理」時間を区切り、生活する上での基本のスケジュールを決める
(2)「ものの管理」片づけが苦手な人が多いため、ものの量や置き場所を決める
(3)「プランニング」感情で物事を決めず、優先順位によって方法と順番を決める
(4)「記憶の補強」メモを活用し、物忘れを防止する
(5)「(気持ちの)持続力」休憩を取ったり、現状を把握したりして心のエネルギーを保つ

 ADHDの特性は人によってさまざまであるため、全てのトラブルを段取り力だけで解決させるのは難しいかもしれない。しかし、この5つの課題を意識して物事を進めていけば、今よりもスムーズに行え、問題解決への糸口を掴めるようにもなる。

 各課題への具体的な取り組み方は本書の第1章で詳しく解説されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。

■スケジュールを立てると、家事はもっとスムーズに

 ADHDの人は同時にさまざまなことをこなさなければならない家事にあたふたしてしまい、結局、満足な結果を得られていないことも多い。しかし、そんなときには完璧を目指すのではなく、「75点」の家事でもいいと考え方を変えてみよう。

 ADHDの人は真面目に大きな目標を立てて、無理しすぎてしまうため、モチベーションが持続できないというケースも少なくない。だが、目標とするハードルを下げれば、やる気がそがれてしまうことも少なくなり、達成感もしっかりと得られるようになる。

 達成が不可能ではない目標を打ち立てるには、先ほど説明した「5つの課題」を家事に当てはめて考えてみるのもよい。例えば、1日の中で家事に当てられる時間には限りがあるからこそ、スケジュールを作って、どんな家事をどれくらいの時間、いつ行うかを明確にしてみよう。スケジュールは平日用と休日用を分けて作って、1日の家事バランスは好き嫌いではなく、優先順位を重視していくのがポイントだ。

 そして、スケジュール通りに家事を行えたら、自分へのご褒美を用意して、より達成感を味わえるようにしてみてほしい。ADHDの人は「一通りの家事を毎日しなければいけない」と思い込んでしまいがちだが、「時間内でできる最低限の家事だけやればいい」と考えて、家事への苦痛を解消していこう。

 具体的なアドバイスを数々与えてくれる本書は、「みんながすんなりできることが、どうして私にはできないのだろう…」という悲しみにもそっと寄り添ってくれる。日常生活の中で困ってしまったら、頼りたくなる1冊だ。

文=古川諭香