『シン・ゴジラ』にはぐいぐいモノを売るヒントがある! 成功例をマネするポイント

ビジネス

公開日:2018/11/29

『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』(理央 周/実務教育出版)

 モノやサービスを売る仕事をしている人たちは、「どうしたら自分たちの商品を買ってもらえるのか?」を常に考えているはずだ。そのための勉強として、コトラーやドラッカーなどの経営学やマーケティングの名著を読破してみる…というのもひとつの手なのだが、20年以上前に書かれた内容を、そのまま目の前の仕事に当てはめるのはあまり現実的ではない。

 そこでおすすめしたいのが、彼らの語るマーケティングの本質を踏まえながら、それを「現代向け」にアップデートしている書籍を読むこと。本書『売上がぐいぐい伸びるお客様の動かし方』(理央 周/実務教育出版)も、そんなマーケティング本のひとつだ。私たちの身近にある「こういう商品、つい買っちゃうな」という例を元に、さまざまな業界で生かせるマーケティング手法を紹介している。

■『シン・ゴジラ』の予告を見ると気になってしまうのはなぜ?

 2016年、庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』が興行収入80億円超えの大ヒットを記録した。この映画のプロモーションには、「ティザー・プロモーション」と呼ばれる手法が使われている。『シン・ゴジラ』で最初に公開された予告編は、あえてゴジラの姿を見せず、パニックに逃げ惑う人たちの様子と、ゴジラの咆哮、そしてタイトルだけが明かされていた。

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 映画のチラシには、「ニッポン対ゴジラ」というコピーがついているが、ストーリーやキャストの情報はない。このように情報を「チラ見せ」されると、私たちは「どんな映画なんだ?」「誰が出るんだろう?」と気になり、ついついその手にあるスマホで検索を始める。

 まさにここに、ティザー・プロモーションの狙いがある。ターゲットへの説明は、「しっかり」すべきだと思いがちだが、何もかも教えてしまえば、そこで同時に興味を失ってしまうかもしれない。「チラ見せ」は、顧客の期待感をあおり、話題と認知を高めることにつなげることができる。

■“インスタ映え”の意識しすぎにはワナがある?

 飲食店のサービスでも、盛り付けで“インスタ映え”を意識することは当たり前になってきた。だが、見た目にインパクトのある料理や、撮影スポットをつくることだけがインスタグラムなどのSNS対策ではない。

 たとえば、アメリカにある「Poke Bar」は、ハワイ風の海鮮丼チェーン店。その特徴は、店頭に並んでいる新鮮な海の幸から、好きな具材を選んで自分だけの海鮮丼を作れる…というもの。人気の秘密は、その味やヘルシーさに加えて、自分で作ったキレイな海鮮丼をSNSにアップできることにある。定番の“映える”料理やスポットも人気だが、さらに“自分だけのオリジナル”という要素があることで、一層SNSにアップして自己表現したいという衝動にかられる…という感覚はわかるだろう。

 とはいえ、著者によれば、“インスタ映え”を一番に考えてしまうのはよくない策だという。SNSにおける拡散は、あくまでプロモーションの“手段”であり、商品を作る“目的”ではないからだ。「Poke Bar」の海鮮丼も、おいしさやヘルシーさといった食事としての本質的な魅力があるからこそ、食べるお客さんは食べる体験を楽しむことができ、そのうえでSNSに載せたくなるのだ。

“売る”ことを仕事にしている人たちも、会社を出れば普段はいろいろな商品を“買う”消費者のひとりだ。マーケティングの考え方を身につけたいと思ったら、本書のような理論と実例が充実した本を読みながら、それを日常生活の中にも置き換えて、「なぜ、この商品を買いたくなったんだろう?」と考えてみてほしい。そうすれば、あなたが「もっと売りたい!」と思っている商品にも、売れる糸口が見つかるかもしれない。

文=中川 凌