表現力で感じる味の領域は広がる!? 味オンチから脱するための「美味しい」の表現

食・料理

公開日:2018/12/7

『豊かな人生を引き寄せる「あ、これ美味しい! 」の言い換え力』(福島宙輝/三才ブックス)

 美味しいものを食べた時、大抵は「おいしい~!」で満足してしまう。しかし人に伝える際に「どう伝えればいいのか…」「とにかくすごくおいしいんだけど…!」とうまく伝えられずにもやもやすることがある。何を食べても的確に味の感想を述べられる人を見ていると、特殊能力を見ているような不思議な気持ちさえしてくる。

 しかし実は、この「味を伝える」ということにはコツがあり、ある程度までのことはほとんどの人に可能なんだとか。その方法を教えてくれるのが、『豊かな人生を引き寄せる「あ、これ美味しい! 」の言い換え力』(福島宙輝/三才ブックス)。本書によると、「味を記憶するスキル」「味を比較するスキル」「味を分析するスキル」の3つからなる“味の物差し”を持ち、鍛えることで、細かな味の違いを感じ分け、それを記憶し、見事に表現できるようになるそうだ。一流の美食家とTVで毎年注目される歌手・GACKTが的確な表現で確実に違いを言い当てられるのも、この物差しを持っているからこそ。

 ではこれを鍛えるには、具体的にどうすればいいのか。

advertisement

■味の物差しを支えるのは、言葉の力!

 まず、味の分かる大人になるためには、味を言語化し、味に形を与えることが大切なんだそう。例えば、日本酒を「フルーティー」から掘り下げるには、爽やかな「りんご」、甘い「メロン」、トロピカルで熟した甘さの「バナナ」の3つの表現を覚える。そしてそれを基軸にしていく。ワインやチョコ、ラーメン等ほかの食べ物にもこれと同じような基軸があり、プロもこれらの軸を基本に味の物差しを調整していくそうだ。

■“味が分かる人”と見せかけるには、ベースとサブの関係、力を語る!

 本当に味が分かる人になるには、かなり時間をかけて知識を詰め込み、経験を得なくてはいけない。しかし「味が分かる人に見せかける」のは、意外と簡単らしい。味を語る時に「ベース」と「サブ」の関係、力を語ると、表現に深みが出る。例えばコーヒーであれば、ベースとなるのは苦みと酸味、サブとなるのは甘みだ。これらを「寄り添う」「持ち上げる」「切る」などの動詞と組み合わせて表現すると、一気に“味が分かる人”感が出る。飲んだ時の感覚をもとに用意された単語を繋ぎ合わせるだけなので、これなら筆者でもできそうだ。

■事前に“形容詞のグラデーション”を頭の中で整理しておく

 例えば、カレーを食べて「辛い」と感じるのは当たり前のこと。大事なのは「どれくらい、どんなふうに辛かったのか」だ。これをスムーズに表現するには、思いつきで表現するのではなく、あまり辛くないものから順に、事前に形容詞をグラデーションのように整理しておくことが大切なんだそう。徐々にその「間」の感覚を埋めていくと、より深くバリエーションに富んだ表現のグラデーションが完成するというわけだ。

『豊かな人生を引き寄せる「あ、これ美味しい! 」の言い換え力』には、このほかにもより確実に的確な言葉を選び出せるようになるコツなど、味を言語化するために必要な技術やテクニックが詳細に書かれている。「味オンチな自分にはどうせ無理」と諦めるのではなく、まずは一歩ずつでもプロが進んだ道を辿ってみると、きっと変化を感じられるはず。プロだって、練習を重ねてプロになったのだ。

文=月乃雫