失敗が怖い、他人の評価が気になる…重たい心を軽くする近道をマンガで紹介

暮らし

公開日:2018/12/12

『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(大野 裕:著、優輝光太朗・サイドランチ:マンガ/池田書店)

 何気ない日常生活の中でも、強いプレッシャーを感じたり失敗できないと思ったりすると、人はどうしても不安を抱いてしまう。特に、真面目で責任感が強い人ほど不安感で心が重たくなってしまう。

 不安を感じることは悪いことではない。なぜなら、不安という感情は、私たちが危険の可能性を察知して安全に生き抜いていくために必要なものだからだ。しかし、心が苦しくなってしまう場合には、感じている不安を上手くコントロールする必要がある。その方法を教えてくれる『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(大野 裕:著、優輝光太朗・サイドランチ:マンガ/池田書店)は、不安との上手な付き合い方を漫画で分かりやすく説く。

■自信がない、他人の評価が怖い…人の不安は三者三様

 本書は職場のストレスなどで不安に悩まされる3人のキャラクターが、作中の不安調整スマホアプリ「OHNO(オーノ)」を使いながら、そのアドバイスで「認知行動療法」をしていくことで不安を克服するというストーリー仕立て。職場でプロジェクトチームのリーダーを任されることになった笹木優子(30歳)、社内のいじられキャラだが実は打たれ弱い富美山敬太(24歳)、部下との付き合い方が分からずトラブルを起こしかねない管理職の谷口隆司(51歳)といった、三者三様の悩みを持つ登場人物たちを見れば、読者は思わず自分自身の悩みを重ね合わせてしまうはず。

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 日常的に「自分ひとりで何でも頑張らないといけない…」と思っている人こそ、この本で得られるヒントをもとに、不安を味方につけて、自分の本領を発揮できるようになっていこう。

■不安とうまく付き合う「認知行動療法」ってなに?

 私たちは同じものを見ても、人によって見え方や感じ方が違う。こうした個人の受け止め方や考え方は「認知」と呼ばれている。その認知は、同じ人でもその時々の状態によって変わってくる。「認知行動療法」とは、個人の認知を変えていくことで、よいパフォーマンスができるようにしていく治療法のことだ。

 例えば、強い不安を感じていると、必要以上に自分を低く評価したり、周囲の目を厳しく感じたりして、余計に不安感が高まってしまうものだ。しかし、認知の仕方を変えて冷静に目の前の現実を見ることができるようになれば、心のモヤモヤが晴れて本来の実力を出せるようになる。

 自分が持っている力を最大限活かせるように行動を変えていく。それが認知行動療法の基本的な考え方だ。

 ちなみに、不安はデメリットしか与えないと思われがちだが、使い方をうまく変えればメリットも生み出してくれる。ほどほどの不安によって少しストレスを感じていたほうが仕事や勉強への集中力は却って高まり、パフォーマンスが上がったという事実もある。

 認知行動療法によって自分の不安を“頼もしい相棒”へ変えることができれば、自分の新しい強みが見えてきそうだ。

■気持ちを伝えるときは「みかんていいな」を意識しよう

 日本人は、自己表現が苦手だといわれており、仕事やプライベートな場で自分の気持ちを上手に主張できず、モヤモヤとしてしまっている人は多いように思える。例えば、本書に登場する富美山くんのように、周囲からのいじりを明るく返しながらも本当は心が傷ついてしまっている方も少なくないはずだ。

 こういった不安を持つ人は、ある程度まで我慢していても限界を迎えたときに、現状を変えようと思うあまり感情的になってしまったり、あるいは事務的に事実のみを伝えたりする形で自分の気持ちを訴えてしまうかもしれないが、それでは周囲に理解されにくい。

 そういうときには、本書が提案する「みかんていいな(見感提否)」を意識して主張をしていけば、気持ちが受け入れてもらえやすくなる。「みかんていいな(見感提否)」を実践するには、「見」える事実と「感」じている気持ちを整理して相手に伝えた上で、自分の考えを「提」案し、もしダメだと「否」定されたときには代替案を出せるようにしておくことが大切だ。

 そして、主張をするときにはおどおどした態度を見せず、角が立たないように言い方の強弱バランスを考えていくことも重要。この3つのポイントを守っていけば、ひとりで抱え込みがちな人間関係の悩みも円滑に解決できる。

■自分を肯定することで、不安やモヤモヤを解消できる

 忙しい現代社会ではひとりひとりに与えられる責任が大きくなっており、成果主義の傾向も強くなってきている。私たちは誰ひとりとして完璧ではありえないのに、ついそのことを忘れて不完全な自分に不安を感じ、苦しくなってしまっている。しかし、自分の不安とうまく向き合い、不完全な自分も受け入れることができれば、心はもっとラクになるだろう。

 失敗をしたりライバルに負けたりすることは、人として生きている限り普通にありえること。それをどう受け止めて周囲に伝えていくかで、心の状態も人間関係も変わっていく。

「ここぞというときに弱い自分が大嫌い…」と自分を責めてしまう方は、気持ちを楽にするヒントを本書で得て、自分を愛せるようになってみてほしい。

文=古川諭香