【不思議で奥深い“コマ”の秘密】なぜ倒れない? この世で最も強いコマは?

暮らし

2018/12/6

『独楽の科学 回転する物体はなぜ倒れないのか?(ブルーバックス)』(山崎詩郎/講談社)

 ハンドスピナーやメリーゴーラウンド、車のタイヤ、プロペラ、フィギュアスケートのトリプルアクセルなど私たちの身の回りには回転するものが多い。我々の生活に欠かせないものから、子どものおもちゃまで様々だ。

 回転する玩具として日本人に馴染み深いのがコマだろう。紐を使ったコマのほか、手で回すコマや変わった形をしているコマ、回転の仕方が一風変わったコマなど、一言でコマといっても幅広い。そして時に静かに、時に荒々しく回るコマは不思議といつまでも眺めていたくなるもの。

 そんなコマを物理学のアプローチで解剖したのが『独楽の科学 回転する物体はなぜ倒れないのか?(ブルーバックス)』(山崎詩郎/講談社)だ。著者は物理学者にして、コマの世界大会への出場経験があるというコマ博士・山崎詩郎氏。彼のコマへの愛や情熱は文章の端々で感じられる。

 そんな本書では「なぜコマは倒れないのか?」といった素朴な疑問について図などを用いて解説したり、立ちコマや逆さコマ、パワーボール、吹きコマなど「面白いコマ、変わったコマ」を紹介したり、「コマを作ろう!」の章では、簡単に作れるコマ作りの手引きが掲載されていたりする。

 とにかく、これ以上コマについて詳細に書かれている書籍はないのでは? と思うほどコマ一色だ。本稿では、その一部分ではあるが、コマの魅力を紹介したい。

■コマはなぜ倒れない?

 コマのフォルムほど不安定なものはないだろう。人間のように二本の足で立っているわけではないし、動物のように四本足でもない。実は、コマが倒れないメカニズムはそのフォルムほど単純ではなかったのだ。

 コマが倒れない理由の一つは、何らかの事情がない限り、コマが回転する勢いの向きと大きさが一定に保たれる「角運動量保存の法則」。コマが傾くと回転方向に向けて自然と回転軸が円を描く力が働く「歳差運動」。そして、コマを立ち上がらせる方向に向かって働く「接地面の摩擦力」。大きくこの3つの力や働きがコマを倒れさせずに回転させているそうだ。

■この世で最も強いコマは?

 世の中にはコマと同じような構造で存在しているものが多い。本書を読んでビックリしたことの一つと言える。例えば、地球や銀河系、原子など大小のバリエーションも豊かだ。他にも自動車を動かすための車輪、電車を動力源のモーターなどもその一つ。

 ところで、この世に存在する最強のコマとは一体何なのだろう。それは「ブラックホール」。実は、ブラックホールは非常に重たいことに加え、回転しており、コマの性質を持っているという。

 そして、時にブラックホール同士がぶつかり合う“ケンカゴマ”の状態になることもあるそう。その詳細はぜひ本書で確かめていただきたい。

 何気なく回して、何気なく見ていたコマ。本書を読むと、コマの世界はなんて奥深いんだと思わず感心してしまう。そういえば、ここ何十年もコマを回していないなぁ。来年の正月に向けて甥っ子・姪っ子たちのために、雑貨屋でコマを探してみようか。

文=冴島友貴