嘘つきアラサー女編集者vs.国家権力!木内一裕氏が描く大逆転ジェットコースターミステリー

文芸・カルチャー

2018/12/7

『嘘ですけど、なにか?』(講談社)

 嘘をつくのは処世術。嘘をついて何が悪い。誰かを悲しませるようなものでないのならば、誰にも嘘だとバレないならば、いくら嘘をついたっていいだろう。

「わたしは編集者です。作家さんの苦しみを減らすためなら、どんなウソだってつきます」。口八丁であらゆるトラブルを解決していく女編集者を主人公としたこのミステリーを読んでいると、「こんな風に上手に嘘をつけるようになりたい」と主人公に憧れすら抱いてしまう。

 そのミステリーとは、木内一裕氏著『嘘ですけど、なにか?』(講談社)。この物語に出てくる主人公がとてつもなくかっこいいのだ。息をするように嘘をつく女…というと聞こえはよくないが、嘘を武器に、問題に立ち向かっていく様はなんと勇ましいことか。著者の木内氏は、『BE-BOP-HIGHSCHOOL』などの作品で知られる漫画家。表紙を飾っている不敵な笑みの女性は一見写真のようだが、実は木内氏によるイラストというから驚かされる。漫画家であり、映画監督でもある木内氏が小説の世界で描く情景はどこをとっても目の前に浮かぶよう。映像化間違いなしの、エンターテインメント大作にあなたも惹き込まれるに違いない。

 主人公・水嶋亜希は、アラサーのミステリー小説編集者。わがままな作家たちを納得させるため、彼女はトラブルのたびに巧みに嘘をつき、その場を上手くおさめてきた。ある日、交通事故に遭いそうになっていたところを高スペックの官僚・待田隆介に救われた亜希は、隆介と一夜をともにすることに。久々の恋の予感に亜希は舞い上がるが、次第に隆介の様子はおかしくなっていく。恋人になるかもしれない男が取った怪しい行動。直後に報じられた隆介が起こしたとしか思えない殺人事件のニュース。思い切って警察へ連絡した亜希を待ち受けていたのは、まさかの自分自身の逮捕だった。おまけにこの事件は、新幹線爆破テロとも関係があるようで…? 圧倒的不利のこの危機を亜希はどんな嘘で切り抜けるのだろうか…。

 亜希の嘘はあまりにも巧みだ。クセのある作家を相手にしても上司を相手にしても、言葉ひとつで彼らをなだめすかしてしまう。嘘をついたことを指摘されても、「わたしは傷ついている患者にお薬を処方したんです」とすら言ってのける彼女の姿は圧巻。そんな彼女だから、たとえ不当に逮捕されたとしても、全く動じはしないのだ。そのあまりにもふてぶてしい姿に思わず吹き出してしまう。「私の質問に答えられないのは、逮捕は行き過ぎだったという自覚があるからですよね?」。尋問をうけるのは亜希のはずなのに、確実に刑事たちを追い詰めていく。嘘をつくのに長けているからか、相手が嘘をつくようならば、見逃しはしない。刑事を言いくるめて情報を引き出す鮮やかさは刑事から「超能力者」呼ばわりされるほどだ。

 次はどんな嘘をかましてくれるのだろうとワクワクハラハラ。テンポのよいスピーディーな展開が心地よい。読み始めたら止まらないジェットコースターミステリーをあなたもぜひ試してみてほしい。読み終えればあなたもきっと主人公・水嶋亜希の虜になるに違いない。

文=アサトーミナミ