「けもなれ」を見てバーに行きたいと思った人必読。人生を後押ししてくれる至極の1杯って?

マンガ

更新日:2018/12/21

 バーでお酒を飲んでいると、普段抱えている悩みがふと口に出ていることがある。それは、バーという日常から切り離された空間、適度な距離感で話を聞いてくれるマスター、そして何よりおいしいお酒によるものだろう。だからこそ、いろいろな物語の中にたびたびバーが登場する。今期放送中のTVドラマ「獣になれない私たち」でも、主人公たちがよく行くクラフトビールバー「5tap」は、彼らの本音を引き出す重要な場所になっている。本稿では、そんなたくさんのドラマが生まれる“バー”に注目して、おすすめの2作品を紹介する。

■家族を亡くし自分の岐路に悩む女性を後押ししてくれた1杯のお酒

『BARレモン・ハート』(古谷三敏/双葉社)

 まずは、長寿漫画『BARレモン・ハート』(古谷三敏/双葉社)。中村梅雀さん主演でドラマ化もされているから、そちらで知っている人もいるだろう。心優しき男たちが夜毎集う酒場「BARレモン・ハート」のマスターは、人を見る目も酒を見る目も一流。夜な夜なお店にやってくるお客さんの話を聞いては、その人に合ったお酒で人生のヒントを与えてくれる。

 最新の33巻では、祖父の駄菓子屋を継ぐかどうか迷っている…という女性がお店にやってくる。彼女は、祖父宅に居候しながら会社で働く予定だったが、祖父が急に亡くなってしまい、昼間にお店をやる人がいなくなってしまった。就職を辞退して自分でお店を継ぐか、それとも諦めるか…。人生の選択を迫られていた彼女に、1杯のバーボンが光明をもたらすのだが…。

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■バーで生きていくと決意した若い女性のきっかけになった1杯のお酒

『まどろみバーメイド』(早川パオ/芳文社)

 もうひとつの作品は、『まどろみバーメイド』(早川パオ/芳文社)だ。“バーメイド”とは、女性バーテンダーのこと。主人公の月川雪は、神出鬼没の屋台バー「SATELLITE(サテライト)」を営んでおり、訪れるお客さんの気分や悩みに合わせたカクテルを出している。同居している騎帆(きほ)や日代子(ひよこ)もホテルなどで働く“バーメイド”で、本作は彼女たちを取り巻く群像劇にもなっている。

 最新の3巻では、雪と騎帆の出会いのエピソードが明かされる。ホテルのバーメイドとして日々厳しい環境で働いていた騎帆は、馴染みの洋食屋「グリーム」が潰れていることに気が付く。店に入ると、店主の娘である雪が凍えた様子でいた。母親と店を失い落ち込んでいる雪に対して、騎帆はスープのように温かいカクテル「ブルショット」を差し出す…(続く4巻はこの12月14日に発売される)。

 ふたつの作品に共通するのは、どちらも「1杯のお酒」が人の心や人生そのものを開く瞬間の感動だ。バーテンダーたちは、日々その知識や観察眼、技術を磨き、お客さんに「最高の1杯」を提供することを目指している。そんなプロたちが待つバーに、あなたも早速今晩行ってみてはどうだろう?

文=中川 凌